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2012-11-20 00:00
日本は、新しい時代のIT・金融・情報戦争に備えよ
大井 幸子
SAIL代表
2012年11月、G2(米中)にオバマ大統領と習近平というリーダーシップが確立した。次の10年、G2に挟まれた日本は、どのような戦略を持って生き延びていかなければならないか?日本の死活問題である。21世紀の最初の10年は、米国覇権主義とグローバル化の時期だった。また、米国は、世界同時多発テロの直後から「テロとの戦い」を掲げ、イラク、アフガニスタンへ侵攻した。しかし、2008年9月に自らが引き起こした金融危機(リーマンショック)による財政破綻から高価な戦争には歯止めがかかり、今は勢力をユーラシア大陸から西太平洋側まで撤退させている。G2の間の空間には日本と朝鮮半島がすっぽり入る。
米中は国内に「分断された社会」という共通の問題を抱える。両大国の国内には、ごく少数の富裕層と多数の貧困層という格差社会がある。そして、超富裕層はすでに国外に脱出している。両国は互いにそのような事情をよく理解し、日本と朝鮮半島の利権を分配することで、利益調整をはかるだろう。こうした「勢力均衡」をベースにしたG2のこれからのせめぎ合いについて考えるとき、日本にとって、金融戦も含め、あらゆる面での安全保障(セキュリティー)の見直しが急務である。
そもそも、21世紀の戦争のあり方そのものが本質的に変わったのだ。1999年に中国でベストセラーとなった『超限戦』(日本語訳2001年、共同通信)は、21世紀の戦争について明確に述べている。それは、貿易、金融、細菌、資源、ハッカーなど軍事行動以外のすべての「非軍事の戦争行動」を含む戦争である。使用兵器も、大砲だけではなく、通貨、細菌、コンピュータウィルスなど多岐に及ぶ。しかも、米ソ冷戦後、戦争を起こすのは主権国家だけではない。アルカイダのように、民族や国境をまたいで自分たちの利益や要求を他国に強制するテロ行為が増えている。
21世紀の安全保障(セキュリティ)を考えるとき、これまでの意識を変える必要がある。非軍事面で特に重要なのが、ITと金融である。大きな金融危機の破壊力は何百兆円にものぼり、爆弾よりも威力がある。ビンラディンを追い詰めるのに最も有効だったのは、資金の封じ込めだった。その場合の戦争空間は、資金が飛び交うネット上である。ITと金融では「情報」がキーである。日本ではスパイ防止法も不完備なうえ、情報を守るという意識が薄い。危機意識のない政府と官僚こそが安全保障にとって最大のお荷物だろう。
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