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2012-11-06 00:00
(連載)米国はアジア回帰しても、中東から手を抜くな(1)
河村 洋
外交評論家
バラク・オバマ大統領は、イラクとアフガニスタンからの撤退の決断と引き換えにアジア回帰戦略を宣言したが、中東はこれまで以上にアメリカの注視と関与を必要としている。他方、きたる大統領選挙に向けて米国にて10月22日に行なわれた外交政策の最終討論では、両候補の話題のほとんどが中東に関するものであった。
中国の台頭が安全保障においてますます重要になり、アジア太平洋地域への資材の配置を増大させる必要性が高まっているのは事実である。しかしだからといって、中東でのアメリカのプレゼンスを低下させるべきだということにはならない。同地域ではテロとの戦いが終結していないばかりか、アラブの春、イランの核開発への野心、シリアの内戦、リビアでのアメリカ大使館襲撃事件などの出来事が発生している。そこでユーラシアにおける東西の国防バランスを再考する必要があるが、アメリカの世界的な戦略バランスへの理解なしに、同盟諸国の政策立案は覚束ない。
アメリカの戦略バランスを理解するにあたり、まず中東において同国が避けて通れない役割を検証したい。アジア回帰戦略の根底にあるのは、ブッシュ政権による中東および中央アジアへのオーバー・ストレッチに歯止めをかけ、人員と資材をアジア太平洋地域に振り向けることである。しかし、クリストファー・スティーブンス駐リビア大使の暗殺によって、アル・カイダがイラクとアフガニスタンで手痛い敗北を喫したにもかかわらず、新たな拠点を築いていることが白日の下にさらされた。イラクとアフガニスタンのテロ活動は弱体化したとはいえ、依然として現地住民への殺戮は続いている。
『ワシントン・ポスト』紙のフレッド・ハイアット編集長は、9・11テロにはアル・カイダの脅威以上に「中東の安定にはイスラム社会がグローバル化と普遍的な人権に適応してゆく必要がある」という重要な意味合いがあることを、オバマ大統領が見過ごしていると指摘する。ハイアット氏は「これはアメリカの課題ではないが、アメリカが無視することはできない課題である」と述べている。また「アメリカは必要とあれば中東で自由を求めて戦う市民を支援するためにいつでも介入できる体制を整えておくべきである。しかしアフガニスタンで見られるように、オバマ大統領は任務の遂行よりもスケジュールを時間通りにこなすことばかりに気をとられている」と主張している。(つづく)
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