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2012-11-06 00:00
(連載)南アフリカでストライキはなぜ拡散したか(2)
六辻 彰二
横浜市立大学講師
貧困と格差に対する不満が増幅したとしても不思議でない状況の下、鉱山労働者たちの声が公式に表出されることは、ほとんどありませんでした。合計34名が死亡したマリカナでのケースも、労働組合が承認していない違法なストライキ(いわゆる山猫スト)であったために、警察の介入を招きました。プラチナ生産最大手のアングロ・アメリカン・プラチナムが1万2000人(10月5日)、金最大手のゴールド・フィールズが8000人(10月25日)の鉱山労働者を解雇したのも、そのストライキが違法であったことが理由でした。
多くの鉱山労働者が違法ストに臨んだ大きな背景には、労働組合が彼らの要望を政府や企業に伝えて改善を求めることや、ストライキの実施に消極的だったことがあります。1960年前後の独立運動でその中核を担って以来、多くのアフリカ諸国では労働組合が大きな政治的発言力をもってきました。他のアフリカ諸国とは歴史的背景が違うものの、南アフリカでも反アパルトヘイト闘争でANCと共闘した労働組合は、1994年以降も政府と緊密な関係を保ってきました。
しかし、政府と密接なのは労働組合だけでなく、民間企業もまたそうでした。アメリカでは政-財-軍、日本では政-官-財の「鉄の三角同盟」がありますが、南アフリカでは政-労-資(財)がトライアングルを形成しているのです。ヨーロッパでも同様の状況があり、コーポラティズムと呼ばれます。国によって違いはありますが、戦後のヨーロッパでは総じて、三者協議のなかで労働組合が賃上げ要求をある程度抑制するかわりに、経営者団体が高い企業税に同意し、それを政府が福祉事業に回すことで、一般国民の実質所得の向上に繋がってきました。
ところが、南アフリカの場合、この三者のトライアングルは、必ずしも国民に恩恵をもたらしているとは言えません。例えば、労働組合のアンブレラ組織である南アフリカ労働組合会議(Congress of South African Trade Unions: COSATU)は、米誌『Forbes』によると、総資産が227億ドル以上にのぼる、南アフリカ屈指の資産家で企業家のP.モツェペ(Patrice Motsepe)氏から資金援助を受けているといわれます。企業家から支援を受けること自体、組合の独立性を損なうもので、実際にCOSATUは、鉱山労働者の組合である全国鉱山労働者組合(National Union of Mineworkers: NUM)とともに、今回の事態を招いた責任が鉱山経営者にあると批判しながらも、彼らの自発的なストライキにも反対しています。これに対して、労働者側からは、労働組合に対する批判が公然とあがっています。(つづく)
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