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2012-10-21 00:00
米・ミャンマーの軍事関係促進への動き
高峰 康修
日本国際フォーラム客員主任研究員
米国は、ミャンマーとの経済的関係のみならず、軍事的関係をも促進しようとしている。米国のバーンズ国務副長官は、アジア歴訪の途次、日本の一部マスコミとの会見で「米国とミャンマーの間の軍事交流再開を検討している」と述べた。さらに、米国防総省のリトル報道官は、米国とタイが中心となって行われる多国間軍事演習「コブラゴールド」に、「ミャンマー軍の小規模な将校団を参加させたいというタイの要請を検討することに異存はない」として、ミャンマーの来年からのオブザーバ参加を打診することを表明している。コブラゴールドには、自衛隊も2005年から参加している。
米国とミャンマーの軍事的関係が進展することは、地政学的インパクトが極めて大きい。アジア太平洋地域、あるいはインド・太平洋地域(Indo-Pacific Region)は、これからの世界の繁栄の源泉であり、グローバルな安全保障にとって最重要の関心対象である。もちろん、我が国にとってもそうである。この地域において、民主主義と自由主義経済を是とする国が一国でも多く増え、政治的・経済的・軍事的にネットワークを作ることが肝要である。周知の通り、ミャンマーは、これまで軍事政権による独裁を理由に、西側による、いささか厳しすぎる経済制裁を受け、対中依存を高めざるを得なかったが、テイン・セイン大統領のもと急速に民主化が進展し、地域における民主主義と自由主義経済を是とする国の仲間入りを果たそうとしている。米国とミャンマーの軍事的関係促進は、こうした動きを加速させることになるであろう。
ところで、インドは、アジア太平洋(インド・太平洋)地域の大国であり、日米にとっても友好国だが、インドの周辺国に中国が軍港などの拠点を次々と確保する、いわゆる「真珠の首飾り作戦」の脅威を感じてきた。その「真珠の首飾り」を構成する国の一つとして、ミャンマーが入っていた。しかし、米国がミャンマーとの軍事的関係を深めて行けば、インドの安全保障環境は大いに改善されることになる。米国とミャンマーの軍事的関係促進は、このように、大きな地政学的インパクトを持つ。ただ、そのためには、ミャンマーの民主化が不可逆的なものとなることが大前提となる。我が国は、10年以上の長期的視点で、ミャンマーの法整備を支援することを打ち出している。これは、法律案の起草や法改正に対する助言、整備した法体系の適切な運用のための人材育成や研修を含む壮大なプロジェクトである。適切な法整備が進み、民主化と「良い統治」が進めば、ミャンマーの投資環境が改善されることはもちろんのこと、米・ミャンマー軍事関係の促進を側面支援することにもなる。そうした、戦略的視点も持って、対ミャンマー法整備支援を進めて行く必要がある。
また、ミャンマーの民主化と安定化には、少数民族問題の解決が不可欠だが、我が国は、外交ルートに加えて、トラック2のルートも用いて、これにも深くコミットしようとしている。ミャンマーの民主化進展について、我が国は米国ともよく協議して、米国とミャンマーの軍事的関係の深化を促すべきであろう。そして、自衛隊とミャンマー軍の軍事的交流の促進も視野に入れるべきである。コブラゴールドへのミャンマーのオブザーバ参加が実現すれば、両者の関係強化の機運が高まるであろう。ミャンマーが経済的に成長することになれば、シーレーンの安全確保が重要となってくる。将来の課題として、海洋の安全保障についての、二国間あるいは多国間の取り組みに、ミャンマーを取り込む必要があろう。さらに、先に述べた通り、ミャンマーはインドの安全保障にとっても重要な存在であるので、日印対話において、ミャンマーとの関係をどう深化するか、積極的に取り上げて行くべきである。ミャンマーに関して、我が国が出来ることは数多くあるし、実際に適切な方策を打ち出している。地域の繁栄と我が国自身の国益のためにも、さらなる取り組みが求められる。
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