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2012-10-04 00:00
日中関係の対立と摩擦を如何に乗り越えるか
池尾 愛子
早稲田大学教授
去る9月30日に、人間文化研究機構主催「国交正常化40周年記念連続シンポジウム:日中関係の信頼・協調の枠組み造りのための構想」の第2回シンポジウム「東京大会」が早稲田大学で開催された(http://www.china-waseda.jp/blog/20120922/)。本大会の共通テーマは「日中関係の対立と摩擦を乗り越える」で、「危機をチャンスに変える!」と熱のこもった講演・討論が繰り広げられた。一時期、会場の井深大記念ホール(400名収容)には立ち見が出るくらいに大いに盛り上がった。東京大会やシンポジウム・シリーズの様子についてのまとまった内容は、後援の朝日新聞社によって近く紹介されることになっているので、私の感想を書き留めておきたい。
王逸舟(Wang Yizhou)北京大学国際関係学院副院長は本大会参加を見送ったものの、企画実行委員会代表の天児慧早稲田大学教授が基調講演者の一人の不参加を見事にカバーした。歩平(Bu Ping)中国社会科学院近代史研究所前所長と、黄大慧(Huang Dahui)中国人民大学教授の参加は叶い、パネルセッション1「歴史の中の協力・対立・誤解」でそれぞれの主張を展開した。いわゆる尖閣諸島問題がシンポジウム全体に影を落としたわけであるが、この問題については、日中の専門家達の間で「『棚上げ』にすべきである」と意見が一致したのが興味深かった。
私などは、パネルの一人である張大銘(Cheung Taiming)カリフォルニア大学サンディエゴ校准教授が言ったように、この問題は「(パンドラの)箱の中にしまっておくのではなく、オープンに議論すべきだ」という意見に傾きたくなる。しかし、1949年建国の国が絡むと、問題処理は一筋縄ではいかないようだ。五百旗頭眞熊本県立大学理事長・防衛大学校前学長が基調講演で語ったように、日中間の歴史は常に再確認しなくてはならないのだろう。鄭永年(Zheng Yongnian)シンガポール国立大学東アジア研究所所長が指摘したように、中国におけるナショナリズムの実態とその行方も気になるものである。
学園の中に目を向けると、秋学期が始まり、留学生の数が着実に増えていることが分かる。留学生達の多くは元気いっぱいで、私の周りもフレッシュなエネルギーに満ちている。しかし、少しうつむき加減で言葉少なになった学生達も一部にいるようにみえる。問題の島々が地理的には本土より台湾に近いところに位置していることが関係しているのかもしれない。本土に留学中の学生達の事も心配である。若者達の交流が国家間の問題に大きな影響を受けないように祈りたい。最後に、現在の日本、戦後の日本の平和な姿が、本土の人々に正しく伝わることを望みたい。
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