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2012-10-02 00:00
(連載)中国・反日デモの後始末をどうすべきか(3)
六辻 彰二
横浜市立大学講師
次に、経済的な対抗措置で圧力をかける、というものがあります。中国は既に、日本からの輸入品に対する審査を強化して時間をかける措置にでており、これは事実上の経済制裁とみてよいでしょう。日本企業のなかにも中国撤退を検討しているところがあり、これも中国政府に対して一定のプレッシャーになるでしょう。しかし、再三言うように、お互いに最大のビジネスパートナーである以上、経済的な対抗措置は両刃の剣で、長く続けることはできません。では、外交はどうでしょうか。賠償請求や、国際的に自国の主張の正当性をアピールする取り組みは不可欠です。しかし、基本的に領土問題は「とるか、とられるか」、言い換えれば「全部か、ゼロか」というゼロ・サム・ゲームになりがちです。「共同管理」という選択は、現実的かも知れませんが、お互いの国内世論から受け入れられやすいものではありません。とすると、外交交渉のみで決着をつけることは、これまたほぼ不可能です。
そうだとすると、最終的に実効性のある手段としては、司法しかないように思います。つまり、竹島領有をめぐる韓国との間の問題で採用した、国際司法裁判所に付託する選択を、尖閣に対しても適用する、ということです。これに対しては、「竹島と違って、尖閣は既に日本が実効支配しており、『領土問題はない』のだから、国際司法裁判所に付託することは中国に譲歩することだ」という批判があり得るでしょう。しかし、竹島問題で韓国が「領土問題はない」と強調して協議を拒むことが問題解決を遠のかせるばかりか、日本の反発を加熱させるように、原則に基づいて「門前払い」することが、事態を悪化させることは否定できません。むしろ、日本の主張が正しく、中国側の言い分が「言いがかり」だと確信しているなら、尖閣の問題を国際司法裁判所に付託することに躊躇する必要はないはずです。仮に中国が乗ってこなければ、それはそれで日本の言い分の正しさを国際的にアピールする条件にもなります。
繰り返しになりますが、デモの鎮静化は中国当局が両国関係を考えて押さえ込んだものに過ぎず、中国国民の間の様々な不満が解消されたわけでも、尖閣問題が根本的に解決したわけでもありません。いわば、問題が潜在化しただけであり、中国国民の間の「押さえ込まれた不満」がこれに加わる悪循環は断ち切れていません。これまで、歴史認識をはじめ、いくつもの課題が、経済関係の維持を優先させるという日中双方の利害の一致により、棚上げにされてきました。それは現実的な判断であった一方、経済関係が深化すれば相互理解が進むはず、という淡い期待に基づいていたようにも思われます。両国間の経済関係は日本にとっても不可欠のものですし、それ自体を否定することはできません。しかし、いかに経済関係が深化しても、それは国家間の戦争を回避することはできても、それだけで両国の国民の間にある不信感を解消したり、中国国内にある反政府感情を緩和したり、まして領土をめぐる対立を解決したりすることはできません。
そのなかで、「実効支配」を掲げて中国との協議機会すら拒絶することが、逆に中国国内の反日世論、ひいては今回のデモや暴動に絶好の口実を与えてしまったことも確かです。その意味で、「経済関係があるから現状をとにかく維持するためにあらゆる問題にフタをする」という選択は、「たとえ軍事的手段によってでも中国を押さえつけるべき」という意見と同じくらい無責任なものです。尖閣問題が両国で国内政治の道具に利用され、それが日中両国間の関係悪化を助長する負の連鎖を断つ時期にきたといえるでしょう。(おわり)
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