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2012-10-01 00:00
(連載)中国・反日デモの後始末をどうすべきか(2)
六辻 彰二
横浜市立大学講師
日常に対する不満を政府に直接ぶつけることは、政治活動が制限されている今の中国では困難です。ところが、反日デモなら当局もある程度容認します。逆に、日中間の経済関係を優先させて、デモをあまり迅速に取り締まれば、政府そのものが批判の対象にもなります。そのため、ある程度ガス抜きをさせておいて、適当なところで引き締める、というのが中国政府の常套手段になっています。今回も、19日に警察当局がデモに参加しないように通達するメールを配信した途端、デモ参加者は姿を消しました。いわば、日本をサンドバックにすることで、中国政府は国民の不満を慰撫しているといえるでしょう。
いずれにせよ、日本大使館だけでなく、日本の民間企業や日本市民までが襲撃される事態を引き起こした点で、今回のデモは明らかに行き過ぎで、許容できるものではありません。戦時下に置いてすら、国際法上、民間人の生命、財産、安全は保護されるべき対象となっています。これを保護できず、さらにまた当事者を法的に処分できないのであれば、中国は「無法国家」の謗りを免れないのです。
その一方で、今回の出来事は、日本政府にも大きな課題を残しました。9月20日、藤村官房長官は大使館被害に対して中国に賠償を請求すると明言したものの、民間企業などの被害については基本的に中国の国内法に基づいて解決されるべき問題とし、企業などから相談があれば政府も支援すると述べるにとどまりました。つまり、政府は民間人の生命や安全の保護を積極的に求めることはしない、という主旨になります。同時にそこからは、とにかく経済関係を維持するために、中国との関係回復を急ごうという姿勢をうかがうことができます。
中国が日本の重要なビジネスパートナーであることは確かですし、関係回復も重要です。また、中国側もデモの本格的な押さえ込みにかかったように、日本との関係修復を図っていることは間違いないでしょう。しかし、それは一時的に不満を押さえ込んだだけに過ぎず、問題は何も解決していないのです。つまり、いつ再燃するかわからない問題を抱え続けることに、変わりはありません。では、尖閣諸島の問題はいかにして解決が可能なのでしょうか。とれる手段は、そう多くありません。一番シンプルな発想としては、軍事的な解決があります。1982年に、イギリスとアルゼンチンの間でフォークランド諸島の領有をめぐって争われたフォークランド紛争のように、軍事的に白黒をつけるのは、確かに一番分かりやすい手段でしょう。しかし、いうまでもなく戦争は避けるべきですし、両国の経済関係に鑑みれば、よほど偶発的な衝突でも発生しない限り、日中両政府はこれを回避しようと努めるでしょう。(つづく)
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