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2012-09-28 00:00
侵略国家が侵略するのは当たり前だ、何の不思議もない
酒井 信彦
日本ナショナリズム研究所長・元東京大学教授
尖閣諸島を日本政府が国有化して、中国では反日大暴動が起きている。日本の中でも、今回の事態を引き起こしたのは、石原東京都知事の購入提案のためで、それまでの安定的状態を壊したとの解説が、マスコミなどでされているのが目に付く。しかし歴史を客観的に眺めてみれば、尖閣獲得は周到に計画された、中国の一貫した戦略の一部であることは、容易に分かることである。そもそも、中華人民共和国が、その成立した時から侵略国家であることは、これ以上もないほど明確な歴史的事実である。第二次大戦後に植民地体制が崩壊し、アジアで数多くの民族が独立を遂げて行った時代の只中で、世界の歴史の流れに全く逆行して、チベット・ウイグル・南モンゴルの土地は、中国人に侵略・併合されてしまった。その面積は合計500万平方キロメートルに達するから、中国の領土960万平方キロメートルの、半分以上になる。またその侵略のやり方が極めて残虐で、チベットでは600万の人口のうち、五分の一に当たる120万人が犠牲となった。
中国はことあるごとに、大国になっても覇権は求めないと言ってきた。しかし覇権を求めないということは、覇権を求めると言っているのと同じである。覇権の野心を全く持たない日本は、覇権を求めないなどとは、絶対に言ってこなかったではないか。「私は絶対にウソはつきません」と言う人間が、最高のウソつきなのである。中国は経済成長に邁進し、その成果を軍備の増強に注ぎ込んできた。文字通りの「富国強兵」路線を驀進してきたのである。その結果、世界第二の経済大国に成るだけでなく、世界第二の軍事大国に成りおおせた。完全に軍事目的の宇宙ステーション、すなわち宇宙軍の基地さえ、自前の技術で完成しようとしている。かつて「悪の帝国」と呼ばれたソ連は、約20年前に崩壊したが、共産主義の多民族国家と言う、全く同じ構造を持つ中国はソ連についで、民主化・民族独立という歴史の進歩の流れの中で消滅すべきだったのに、ソ連を凌ぐ「極悪帝国」として生き延びてしまったのである。ただし、その犯罪国家の成長を黙認していたのが、世界の警察官・アメリカであることは、極めて重要な事実である。
その凶悪な侵略国家が、侵略に乗り出すのは、まことに当然なことであって、全く疑問の余地がない。そもそも我が日本は、歴史をキチンと反省していないから、再び過去の過ちを繰り返すに違いないと、歴史問題を種に批判され続けているではないか。それならば、現実に侵略をやり続けている、現役バリバリの侵略国家・中国が、更なる侵略に乗り出すのは、必然中の必然、これほど確かなことはない、と言わなければならない。思った通り、最近の中国は侵略の意志を、ことさら隠さなくなった。それが、「核心的利益」の範囲・空間の拡張である。従来、チベット・東トルキスタン・台湾だったものが、南シナ海・東シナ海も含まれるようになったのである。明らかに中国による、「侵略宣言」に他ならない。その中国の目の前に存在しているのが日本列島である。
日本は戦後、アメリカ製の「平和憲法」と、これもアメリカによる日米安保条約によって、「自分で自分の国を守る」という、独立国として最低限必要な国防意識を持たないまま、フラフラと数十年を過ごしてきた。侵略国家・中国にとって、これほど素晴らしい侵略の対象はありえない。しかも日本に対しては、以前から歴史問題を利用して、充分に精神的な侵略を実現しているから、なおさらである。そもそも侵略現行犯国家に、歴史問題によって脅迫されるのは、極めて不様な醜態であり、この上ない屈辱であるにも拘わらず、日本人はその自覚すらない。この日本の白痴状態が、こんな馬鹿な国なら侵略できると、彼らの対日侵略意欲を、いっそう掻き立てるのである。現在、アメリカのアジア回帰が指摘され、冷戦の復活などと言われているが、もしそうだとしても、それは極めて一時的なものに過ぎないと思われる。大きな視野で、長期的に見れば、アメリカの衰退は避けられず、結局、アジアから撤退して行くであろう。その軍事的空白を埋めるのは、中国の軍事力である。日本人が精神の奴隷状態から目覚めない限り、その先に用意されているのは、亡国というおぞましい境遇である。
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