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2012-09-25 00:00
リーダー不毛の時代を迎えた日本
尾形 宣夫
ジャーナリスト
このところの政治の状況を見ていると、政治のリーダーシップとは何なのかなどと真面目に考え込んでしまう。古い言葉だが中国の古典にある「経世済民」は変じて「経済」となったが、もともとの意味は「世を經(おさ)め、民を濟(すく)う」。為政に当たる者が肝に銘じることである。さらに国家の秩序を整え治めることは「経綸」と言われたが、今の政治・行政に当たる者にどれだけその認識がある者がいるか極めて疑わしい。
「失われた10年」は、バブル経済が崩壊した1990年代前半から2000年代前半にわたって、政治や行政に従来の常識が通用しなくなった社会の混乱を指すが、この状況にさらに政治の混乱が加わって今では当たり前のように「失われた20年」と言われるようになった。国の統治機構が現状にそぐわなくなったが、その処方せんが見つからない。明治政府以来の中央集権が諸悪の根源だといって地方分権が産声を上げたが、中央省庁の厚い壁に遮られて一進一退どころか、現在の野田政権では土蔵の棚でほこりをかぶったまま放置されたも同然である。
要は社会の仕組みを今の状況に見合ったものに変えることだが、それを引っ張るリーダーがいない。政界、経済界を見渡しても、これはといった人物は見当たらない。人材不毛の時代である。そこに鬼っ子のような「維新の会」が現れて、永田町に殴り込みをかけている。この数年、首相の任期はほぼ1年。辞任の理由はさまざまだが、誰ひとり惜しまれて身を引いた首相はいなかった。政権交代で華々しく登場した民主党政権もやることなすことがちぐはぐで余命いくばくもない。
自民党も総裁選で現職を引きずり降ろして、「われこそは」と気が荒かった。日米関係、領土問題などで上げた気勢も恐ろしい程に元気だ。出戻り、平成の光秀、オタクなどなど、マスコミが面白がって付けた名前が笑いを誘う。 領土、日米同盟問題で威勢のいい演説を聞いていると、明治時代の思想家でジャーナリストだった中江兆民が著した『三酔人経綸問答』の「豪傑君」がそろい踏みしているようだ。理想論の「紳士君」はいないのか。相容れない2人に教える「南海先生」はどこにいる。
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