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2012-09-16 00:00
(連載)国家意識・民族意識を完全に喪失した日本人(2)
酒井 信彦
日本ナショナリズム研究所長・元東京大学教授
中国は今から30年前、1982年の第一次教科書事件以来、歴史問題を利用した日本人への精神侵略を、積極的に推進してきた。さらに21世紀になると、中国によって直接的に、日本の外交権を侵害する行動や、反日デモを使った日本攻撃が行われるようになる。愚かな日本人はすっかり忘れてしまっているが、02年には瀋陽領事館事件、03年に西安寸劇事件、04年にアジア杯サッカー事件、05年に極めて大規模な官製反日暴動、08年には日本の地で中国学生による長野争乱事件、10年には前回の尖閣事件、そして今年の尖閣事件と大使襲撃事件と、日本へのテロ攻撃と言うべきものが、連続して起こされてきた。そのつど日本側は強く抗議も反発もできず、不様な屈服を繰り返してきた。やり口は次第にエスカレートして、とうとう今回の事態に至ったのである。
それにしても、大使襲撃事件に対する我が国の無反応振りは、まことに凄まじいものである。日本国家が最高度に侮辱されながら、それを屈辱と感じる人間が、一体どれほどいるのであろうか。世の中では政治の動向で大騒ぎしながら、日の丸が強奪された大使襲撃事件など、事件発生から二週間しか経っていないのに、完全に忘れられてしまっている。ところが一方では、スポーツの話になると、「ニッポン」の絶叫が響き、日本国旗・日の丸が打って変わって珍重される。しかしこれは結局、私が以前から主張している、「スポーツだけのナショナリズム」なのである。日の丸は要するに、スポーツの応援旗に過ぎないのである。
その意味で現在の日本人は、強固な民族意識を持っていた幕末維新期の日本人とは、似ても似つかない、腑抜け民族に成り果てているのである。現在の日本では、維新が大流行であるが、精神状況は全く異なるのだ。保守派の人々は、日本人は優れた民族だというのが口癖であるが、幾ら昔は優れた民族であっても、現在が馬鹿であればどうしようも無いのである。国家にも民族にも、栄枯盛衰があるのであり、現在の日本人は明らかに極めて劣った民族であって、100年前の中国人・朝鮮人よりも、さらに遥かに劣っていると言わざるをえない。
日本の現状を客観的の直視する限り、私は日本人の国家意識、さらにその根底の民族意識は、完全に死滅したと考えざるをえない。この日本人が自覚していない、日本人の精神の悲惨な状況を、最も良く理解しているのは、中国の支配者たちである。歴史問題で日本への精神侵略を開始したとき、彼らもこれほど成功するとは考えていなかったであろうが、時を経るにしたがって、日本人の精神がいかに堕落しているかを、正確に感知したのである。先述した、21世紀になってからの各種の攻撃は、日本人の精神がどこまでダメになったかを、刺激を与えてみることによってテストしていたのである。つまり日本人の国家意識・民族意識についての、生体反応テストである。大使襲撃事件でも、一向に燃え上がらない日本人のナショナリズムを観察して、日本人の民族意識の喪失を確認した中国人は、今後よりいっそう深化した日本侵略に突き進むに違いない。その先には日本国家の滅亡がある。(おわり)
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