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2012-09-11 00:00
「オスプレイ騒動」は速やかに幕引きにせよ
高峰 康修
日本国際フォーラム客員主任研究員
米海兵隊の老朽化した大型輸送ヘリを代替するために普天間に配備する、垂直離着陸機MV22オスプレイについて、その安全性を疑問視する声に配慮して、日米合同委員会を作って安全性を検証するとともに、日米それぞれが事故評価報告書を出すという事態になっている。米側の報告書も日本側の報告書も、事故は人的要因であって機体そのものが要因であるわけではないとしている。オスプレイの事故率(直近10万飛行時間当たり1.93)は、海兵隊の全航空機の事故率の平均値(同2.45)よりも低いのだから、報告書の結果は当然である。
このオスプレイ騒動は、我が国の安全保障に関する錯乱した議論を象徴している。まず、理屈よりも感情の優先である。上記の事故率の数値といった客観的なものを無視してみたり、あるいは、老朽化して事故の危険が増していく旧式ヘリをどうするかといったことが、きれいに抜け落ちている。そして、「機体の安全性」と「安全保障」という次元の全く異なる安全の概念を全く整理していない。その典型的な例として、住民の安全と日米同盟を引き換えにするのか、という趣旨のことを述べた自治体の長がいたが、あまりにも非論理的である。もちろん、機体の安全性と安全保障は、必ずしも無関係というわけではない。ただし、それは、仮に信頼できない機体であれば、抑止力を担保できない、という意味においてである。オスプレイに関して、そういう問題設定に基づいた議論は聞いたことがない。もっとも、有事に際して信頼できないなどということでは使い物にならないので、機体の安全性を高めるよう最大限に努力しているはずであるという「性善説」に立って捉えるのが合理的であるとも言える。
次に、国家安全保障問題における地方自治体の強過ぎる発言力である。オスプレイを配備するならば米軍再編に協力できない、という発言すらあった。一体、何の権限があるというのだろうか。こんなことになるのも、これまで、国家安全保障について真正面から語るよりは、地元の理解を得ると称して懐柔策を主としてきたツケである。こうした姿勢は改めなければならない。政府は、オスプレイの安全性について丁寧に説明していくと言っているが、過度の低姿勢は、地方が国家安全保障に強い発言権を持っているかの如き錯覚を助長するおそれがある。また、オスプレイの「機体の安全性」にばかり目を向けさせ、海兵隊の抑止力向上が持つ戦略的意義の理解が進まない原因となる可能性もある。飛行ルートの制限などの措置も検討されているようだが、同様の理由で、あまり賛成できない。
さらに、オスプレイの持つ高速で大量の物資を輸送できる能力は、自衛隊にも強く求められるものであり、将来その導入がなされてしかるべきものである。今、オスプレイについて腰が引けた態度をとることは、そうした面でもマイナスとなる可能性がある。一機種をめぐって日米合同委員会を開くというのは、米国側の極めて厚い配慮であり、日本重視の表れである。飛行ルートなどに厳しい注文をつけて、付き合いにくい同盟国となるべきではない。それは、米国のためではなく、我が国自身のためである。オスプレイ騒動は、可及的速やかに幕引きにすべきである。
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