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2012-09-10 00:00
対韓及び対中国、野田総理親書のもたらしたもの
大河原良雄
グローバル・フォーラム代表世話人
9月4日付けのインターナショナル・ヘラルドトリビューン紙は9月4日及び5日のクリントン米国務長官の中国訪問を前にして、中国が東シナ海及び南シナ海の領土問題についてその主張を強めている旨の見出しの下でこの問題についての最近の動きを報じている。
その中で同紙ジエーン・パーレッツ記者は「中国による控え目な勝利と解される動きとして」8月31日に日本の野田総理が中国の胡錦涛主席宛の親書を発出し、中国では釣魚島、日本では尖閣諸島と呼ばれる東シナ海の島嶼について『双方の冷静な対応』を呼びかけた」と記している。更に同記事は「当該書簡は8月19日に行われた10人の日本人行動家グループの日本政府の許可のないままの同島への上陸に対処する日本政府の歩み寄り的ジェスチャーと見られた」と記している。
この様なトーンの報道は恐らく野田総理の親書を準備した総理官邸の期待した受け取られ方とは恐らくそぐわないものであったのではないかと解せられる。この事に関して直ちに想起されるのは、先般の野田総理の李明博韓国大統領に宛てられた親書を繞る日韓間の異常な混乱と摩擦である。先方は竹島問題に関するものと報じられた野田親書の受領を拒否し、在京韓国大使館参事官を通じてこれを返却せんとしたが、わが方外務省はこれの返却を拒否し、同大使館はこれに対して書留郵便にて送達して来たとの新聞報道に耳目をそばだてられた事は未だ記憶に新しい。報道によればこの親書は竹島問題に関するわが方立場をより明確且つ的確に直接韓国側首脳に理解を求めようとしたものであった筈であるが、結果的には却って事態を混乱せしめるものとなった。
本来、一国首脳の相手国首脳に宛てた親書はあり得る案件について首脳間の直接交信を通じて先方の理解を求める事を目的とするものであり、それによる効果を期待しているものである。然し、今回の韓国及び中国首脳に宛てた野田総理の親書はそもそもその効果を期待し得るものであったか否かが疑わしい。今後外交的な親書発出については相手国との関係、首脳間の関係、問題の所在、内容の適否等を検討の上、余程慎重であって欲しいと思う。
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