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2012-09-09 00:00
米の太平洋重視を象徴するクリントンのPIF参加
高峰 康修
日本国際フォーラム客員主任研究員
米国のクリントン国務長官は、8月31日に南太平洋のクック諸島で開かれたPIF(太平洋諸島フォーラム)に初参加し、「21世紀は米国にとって太平洋の世紀である」と明言した。5月には沖縄県名護市で開かれた第6回太平洋島サミットに米国が初めて代表を送ってきた。そして、今回クリントン長官が、クリントン外交の総仕上げともいうべきアジア太平洋歴訪の出発点としてPIF参加を選んだことは、その言葉の通り、米国が「太平洋国家」であることを改めて明確にしたものである。クリントン長官は、エネルギー開発や沿岸警備分野などにおいて、太平洋島嶼国への総額3200万ドル(約25億1000万円)の経済援助を行い、技術協力を拡大する方針を示した。さらに、違法漁船の監視活動に対して米海軍が協力することも明らかにした。
太平洋の島嶼国には、最近、中国が援助攻勢をかけて影響力を増している。クリントン長官による太平洋島嶼国援助強化は、もちろん、それを牽制する意味はある。中国は、援助を通じて、国連での票集めをしたり、台湾との間に外交関係のある島嶼国に態度を見直すよう促したり、軍事情報収集拠点を作ったりしている。ただ、西太平洋や南シナ海への中国海軍の進出といったこととは次元の異なる話である。南太平洋を舞台に米中の海軍が火花を散らす、などという構図はまず考えられない。太平洋の島嶼国への中国の浸透を最も直接的に脅威と感じているのは、南太平洋を「裏庭」と看做している豪州である。そして、豪州は、アジア太平洋における日米の重要なパートナーである。むしろ、太平洋の島嶼国への援助は、豪州への側面支援という意義が大きいのではないかと思う。
そして、太平洋の島嶼国援助では実績のある我が国の果たす役割は大きい。我が国は、被援助国のニーズを細やかに汲み取り、丁寧な援助を行うのが持ち味である。この地域でも当然そうした姿勢でやっていくべきであるし、それが効果的である。いたずらに中国の真似をして道路や役所などのインフラ援助で競争するべきではない。海水の淡水化や、潮力発電の研究などは喜ばれるであろう。また、水産資源の管理への協力は是非行いたい。米国はそのために海軍を出すと言っている。このような海洋秩序の構築においても日米豪協力が成り立ち、海洋ガバナンスを主眼の一つに据えるべきである。
中国による野放図な支援は、被援助国の財政を悪化させるおそれがある。こうしたことは、単に中国との勢力争いというだけでなく、「良い統治」(日本政府流にいえば「人間の安全保障」だが、筆者はこの用語を好まない)の理念からも、牽制する必要がある。日米豪、それにNZがリードして、太平洋の島嶼国による共存共栄を目指すべきである。こういう努力は、アジア太平洋の安全保障環境の改善に、直接的にではないが、間接的に寄与する。クリントン長官が発した「米国は太平洋国家である」というメッセージを支持し、米国のそのような姿勢が継続することを期待するとともに、我が国も役割を果たしていく必要がある。
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