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2012-09-04 00:00
(連載)これが日本の政治の現実だ!(1)
尾形 宣夫
ジャーナリスト
全くもって腹立たしい限りだ。野田首相に対する問責決議が参院で可決されて野党は一切の審議を拒否し、今国会は先月末から事実上の開店休業状態となっている。会期末は今月8日だが、今や民主も自民も目前に迫った党代表選、総裁選で頭がいっぱいで、国会のことなど構ってはいられないといった風である。決議案に法的な拘束力はない。可決されたからといって、野田首相は辞めなければならないわけではないが、自民党政権時代の2008年に福田首相、2009年に麻生首相に対する問責決議案が可決されている。福田氏は3カ月後に総辞職、麻生氏は1週間後に解散に打って出たが総選挙で大敗、民主党政権が誕生した。問責決議は政権の命運を決めるものだ。「法的拘束力がない」などと言って済むものではない。
野田首相は否応なしに総選挙の洗礼を受けなければならない。もはや来年までの任期いっぱい政権を維持することなどできない。秋の臨時国会で解散、11月には総選挙となるのは間違いなさそうだ。国会議員が職場放棄して国会が「寝て」しまえば、国民の生活に影響のある今年度予算の執行もままならない。財源となる公債発行法案が野ざらしとなり、最高裁に「違憲」と烙印を押された一票の格差を是正する選挙制度改革法案といった重要法案が放置されただけでない。野田政権が国会に提案した法案は僅かに5割を少し超えただけが成立しただけのありさまだ。こんな事態になったことを政権は首相問責決議案を出した野党のせいにするし、野党も政権の不誠実をなじるだけで肝心の国民のことなどそっちのけのケンカ三昧である。
元はといえば、政権がねじれ国会で成立のめども立たない選挙制度改革法案を一方的に衆院で可決したしたことが決定的だった。まさに、口とは裏腹に政権延命のため自公両党との〝信義〟を裏切り、「問責決議」を出させるよう仕向けたも同じである。与野党とももっともなことを言っているようだが、一皮むけば党利党略以外の何ものでもない。こんな状態では民主、自民、公明の3党合意などはどうなってしまうのか。「合意の精神は残っている」「合意など消えてしまった」と与野党幹部は吠えまくっているが、そもそも民主、自民、公明3党の合意とは一体何なのかである。
3党合意とその後の8月上旬に行われた野田・谷垣両氏による民自両党首の会談は、野田政権が「政治生命をかける」と気負った社会保障と税の一体改革を通すための「手打ち」だった。その裏に「近いうちの解散」で意を通じたから他野党が突きつけた内閣不信任、首相問責決議案を葬り去ったのだが、いざ法案が成立してしまうと、首相が約束したはずの「近いうちの解散」はいつの間にか曖昧になってしまった。首相は自らに帰す解散権を安易に口にできないから「近いうちに」と言って協力を求めたのだろうし、一方の谷垣氏も首相の立場を慮って「近いうちに」を好意的に早とちりしてしまったのか。谷垣氏にすればせっかくの好意を無視されたのだから激怒するのも無理はない。振り上げたこぶしを下ろせなくなって首相問責決議案を出したのだが、他野党の協力が得られず独自の決議案を国会に上程できなかった。盟友の公明党もそっぽを向いてしまった。自民はやむなく他野党の問責決議案に相乗りして首相問責にたどり着いたというわけである。いかにも分かりにくい自民の行動だったが、この迷走で谷垣氏はすっかり男を下げてしまった。(つづく)
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