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2012-08-21 00:00
(連載)パワー・シフト時代における米欧同盟の再強化(2)
河村 洋
外交評論家
政治的な側面以外にも問題はある。レナード氏は「オバマ氏は出自からいってヨーロッパよりもアジアおよびアフリカ志向である」と述べている。確かにオバマ氏はケニア人を父親に持ち、少年時代をインドネシアで過ごしている。しかし一国の指導者にとって自らの政策が、人種、民族、階級、その他の出自に影響を受けているとの印象を抱かれることは大失態であると私は考えている。またオバマ氏のビジネスライクな態度もこれまでのアメリカ大統領のようにヨーロッパ諸国の指導者達との個人的な友好を深めることを阻んでいる。レナード氏以外からもこうした指摘は挙がっている。リチャード・アーミテージ元国務副長官は「バラク・オバマ氏はジョージ・W・ブッシュ氏のような人間味に欠けるために外国の指導者達との人間関係を築きにくい」と語っている。
ヨーロッパ側にも問題はある。ヨーロッパは世界運営の責任をアメリカと分け合うことに消極的であり続けた。これは防衛において顕著である。ヨーロッパの軍事支出は世界の21%を占め、中国、ロシア、その他新興諸国よりもはるかに多い。しかしヨーロッパは自らの政治、経済、軍事力をグローバルな舞台で積極的に活用しようとしない。ヨーロッパ諸国はアメリカという保安官に安全保障の責任を丸投げしている。極めて重要なのは、イギリス労働党の論客マーク・レナード氏が指摘するこの問題点が、アメリカのネオコンサーバティブの論客ロバート・ケーガン氏の主張とほとんど同じであるということである。
現在のヨーロッパでは、指導者のほとんどがユーロ危機に気をとられており、内向きの傾向を強めている。今夏に開催されたNATOシカゴ首脳会議では、上記のような大西洋同盟の停滞が印象づけられた。これはヨーロッパ大西洋圏だけの問題ではない。例えば日本の指導者達は中国への恐怖心から、あまりにもナイーブにオバマ政権のアジア重視を歓迎している。だが西洋から東洋へのパワー・シフトという地理的な側面から一歩進んで、アジア重視政策の真の意味を考える必要があるのではないか。オバマ政権がアジアへのシフトを強めるということは、パートナーシップの優先順位が、従来からの民主的な同盟国から体制の如何を問わず新興諸国にシフトすることをも意味している。したがって米欧関係の停滞は日本の国益を害しかねないのである。
その根底にある問題はオバマ政権の外交政策の前提がアメリカの衰退を不可避としていることであり、そのために中国との「G2」パートナーシップなるものを受け入れる、ロシアとのリセットでプーチン氏でなくメドベージェフ氏を窓口とする、イランのグリーン運動への支援を控える、などの戦略上の誤りを犯すことになった。このようなアジア回帰ならば、深刻に問題視しなければならない。オバマ政権は、「アメリカはアジアに重点を移す」といいながら、実際には海軍と空軍を中心に展開されるアジアでの軍事力は縮小されている。(つづく)
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