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2012-07-31 00:00
(連載)懸念されるシリア・アサド政権の大量破壊兵器使用の可能性(2)
六辻 彰二
横浜市立大学講師
生物・化学兵器は市民も社会的弱者も関係なく、無差別の殺傷を可能にするため、その使用には一般に強い「タブー」意識があります。湾岸戦争で化学兵器の使用を威嚇に使用したイラクのサダム・フセインが、その後急速に国際的に孤立していったことは、当然といえば当然の結果でした。しかし、その「タブー」に起因する批判は、公式の最高責任者に向けられることになりがちです。シリアの実力者たちからみた場合、最終的な責任はアサドに被せることが可能です。故に、生物・化学兵器の使用に関するハードルは、シリアにおいて低くなるといえるのです。
第三に、現代において生物・化学兵器は、実際に使用する兵器としてよりむしろ、その保有を疑わせたり、ほのめかしたりすることで、相手からの介入を拒絶するための、戦略的抑止兵器としての側面が濃厚です。しかし、その脅しは平時において、しかも相手が外国政府である場合には有効なのですが、既に戦闘がこれだけ大規模化しており、相手が政権打倒のために生命を省みなくなっている反体制派を相手にした場合、ほとんど効果を発揮しないと考えられます。使用しないままでの威嚇が成功しないとすると、かえって実際に使用して、恐怖感を相手に植え付けよう、という心理が働くことは、想像に難くありません。
第四に、そして最も切実な理由として、アサド体制が相当程度追い込まれてきている、ということです。大量破壊兵器の保有を認めたこと自体、それを示しています。後ろ盾だったロシアも、既にシリア向け武器輸出を停止する方針を示しており、さらに大量破壊兵器の使用の可能性に関してアサド政権から打診を受けた際、当然と言えば当然ですが、これを一蹴したと伝えられています。国際的にも孤立しつつあるなか、主要都市での決戦に力を集約し始めたこともまた、アサド体制の苦境を物語ります。
以上の理由から、そうならないことを念じながらも、シリアの実力者たちが生物・化学兵器の使用という禁じ手に踏み切る公算は大きいといわざるを得ません。そして、もし仮に大量破壊兵器が使用された場合、シリア内部の相互不信はさらに高まり、戦闘が収束した後も、その将来に暗い影を投げかけることになると予想されるのです。(おわり)
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