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2012-07-06 00:00
ロシア首相の北方領土訪問の意味を過大視するな
飯島 一孝
ジャーナリスト
ロシアのメドベージェフ首相は7月3日、北方領土の国後島を再訪問したが、2010年10月と今回の訪問では意味が全く違う。前回は歴代の国家指導者として初めての北方領土訪問だったが、今回は今年9月のAPEC首脳会議(ウラジオストクで開催)に向けての視察であり、日本側が大袈裟に取り上げるのはあまり意味がないと思う。日本のメディアは、ロシア首相の国後島訪問をNHKがトップニュースで取り上げたのをはじめ、大々的に報道したところが多かった。だが、ロシアのメディアは「日本側が(首相の北方領土訪問の)説明を求める」(インタファクス通信)などと、抑えた報道が多く、むしろ四島の開発計画が順調に進んでいるかどうかに関心が寄せられていた。
もともと今回の首相訪問に関してロシア側は「首相の通常の国内視察」ととらえ、静かに行う構えだったが、日本側が過剰気味に反応し、事態がオーバーに受け取られた印象が強い。そうなると、ロシア側は意地でも「北方領土に行かなければ」という雰囲気になる。これはお互いにとって好ましいことではない。
プーチン大統領と野田首相との初顔合わせ(6月のメキシコでの首脳会談)がうまくいき、領土交渉がいよいよこれから始まるというタイミングで、ロシア首相の北方領土訪問が急浮上したことから、日本側が「ロシアは何を考えているのか」と、腹立たしい気持ちになるのは理解できる。だが、ロシア人にはあまりそうした繊細な心配りがないことも心得ておくべきだろう。
我々としては、こうした“神経戦”にあまりとらわれず、あくまで交渉で解決するという本筋を忘れないことが大事だ。相手の政府首脳の行動に目くじらを立てるよりも、日本側の政権基盤が低下するほうがよほど重大問題だ。野田政権が党内問題を解決して、国会運営を乗り切り、早く外交問題に取り組む態勢を整えるべきだ。それなくしては、北方領土問題の解決はおぼつかない。
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