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2006-08-28 00:00
犯罪企業には外部からの監視も必要
浜本聡史
会社員
私が8月14日付けの本掲示板で「軍事技術漏洩防止の体制を強化せよ」の一文を投稿した数日後に、大手精密測定器メーカーのミツトヨの社長他4名が外為法違反事件で逮捕され、核兵器の製造に転用可能な三次元測定器を不正に輸出していた実態が明らかになりました。捜査当局は、社内審査などのチェック機能の形骸化が一因と見ているようですが、問題はもっと根が深く、ミツトヨの計画的な犯罪の側面が露になりつつあります。軍事技術に転用できる高性能製品の不正輸出を防止できねば、それはやがては核の闇市場に流出し、国際テロ組織や北朝鮮、イランの手に渡り、明日のわれわれの平和を脅かしかねません。輸出規制の強化に向けられてきた「法改正論議」(外為法の見直し)は、この事件を機に根本から考え直すべき時期に来ていると思います。
不正輸出事件の背景にあるのは、社内の審査機能の不備であるとされてきましたが、果たしてそうでしょうか。問題はもっと深刻であるように思われます。ミツトヨの場合には、第三次測定器が輸出規制対象に該当するかなどを審査する社内の輸出審査委員会がほとんど開かれていませんでした。しかも、第三次元測定器の性能を低く見せるために性能擬装用ソフトを開発するという、あってはならない悪質な工作が発覚しています。たんに企業内規程の有無だけの問題ではありません。経営者の指示だったのかどうかは、捜査を待たねばなりませんが、これでは企業内規程の有無以前の問題です。
報道によれば、ミツトヨは1992年に社内でプロジェクト・チームを発足させて性能偽装用ソフトの開発を行い、第三次測定器に搭載して輸出していたようです。輸出許可申請を避けるための犯罪行為ですが、1992年にイラン向け第三次元測定器輸出を大量破壊兵器開発への転用の恐れなどを理由に取りやめるよう行政指導があったことがソフト開発につながったとあっては、やはり企業内規程の整備以前の問題であったといわざるを得ません。低性能を表示するプログラムを開発し、その上で相手国に輸出するだけでなく、現地法人を経由して輸出するという手の込んだ二重の偽装を行っていたということであれば、これはミツトヨが犯罪集団であったということに他なりません。
2006年1月1日付輸出貿易管理令の省令改正では、大量破壊兵器関連機材や通常兵器関連汎用品といったリスト規制の管理対象品の品目改訂や、キャッチオール規制である関税率の改訂などを実施しましたが、これからは、輸出許可の企業内審査機能そのものに、外部からの監視の目を入れるなどの厳しいガイドラインを導入しなければ、軍事技術漏洩事件は永遠になくならないでしょう。ところが、日本では手続きの迅速性を促進するために、手続き書類の簡素化などばかりが強調され、輸出管理における企業内規程の整備や輸出管理審査委員会の強化などの社内審査に係わる重要な部分への目配りが、欠落してきました。日本政府が輸出貿易に関して迅速な手続きを目指すことは間違いではありませんが、企業内の審査機能を企業に任せきりにしないなどの根本的対策を導入し、国際的信用を取り戻すことこそが、いま問われていることだと思います。
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