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2012-06-27 00:00
(連載)プーチン訪中に見る中露の複雑な関係(2)
袴田 茂樹
新潟県立大学教授
ロシアの大統領選挙直前の2月末に、プーチンは外交論文を発表し、中露関係にも具体的に言及した。その論文では、中露関係における肯定的な面を挙げた後、中国への厳しい言葉を続けた。首相の公式発言としては異例のことだ。両国間にはギスギスした問題もあるとして、(1)第3国における経済利害の不一致(注、中央アジアにおける経済競合や、中国によるロシア兵器のコピーの輸出など)、(2)不適切な貿易構造(注、ロシアは一方的に資源を輸出し、中国から工業製品を輸入)、それに(3)中国人移民問題に言及した。
今回のSCO首脳会談でも、2つの局面において両国の対立が目を引いた。一つは、経済面における対立の構図である。中国は経済力と資金力にものを言わせて、影響力の拡大を図ろうとして、SCO内で基金を設立したり、インフラ開発に投資したりし、他方、ロシアはこれを阻止しようとしている。もう一つは、SCOメンバー国の拡大に関する対立である。ロシアはインドやパキスタンなどのオブザーバー国を正式メンバーに加えて、同機構内における中国の比重を相対的に小さくしようと図っている。これに対して中国は、SCOは中露両国と中央アジア諸国を中心にすべきと考えており、性急な拡大を抑えようとしている。
ちなみに、SCOの現在のメンバー国は、中国、ロシア、カザフスタン、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタンの6カ国。オブザーバー国はインド、パキスタン、モンゴル、イラン、アフガニスタン(新規)の5カ国。対話パートナー国はスリランカ、ベラルーシ、トルコ(新規)の3カ国である。まず、中国の経済支配について見よう。今回の首脳会議後の声明は、「各国首脳は、各国の代表に、SCO開発銀行とSCO基金の創設に関する研究を継続し、早急に準備するよう委ねた」と述べている。実は今回の首脳会議で中国は、「SCO開発銀行」、および「SCO特別口座」すなわち国際通貨基金(IMF)に準じた「SCO基金」の2つを創設し、そこに中国元を投入して域内における影響力を拡大しようとしていた。
ロシア紙によると、SCO首脳会談に先立って5月17日に北京で開催されたSCO財務相・中央銀行総裁会議において、SCO開発銀行の創設が討議された。そして中国は、その銀行の本部を北京にあるSCO本部と同じ場所に予定し、開発銀行総裁も具体的な中国人を定めていた、という。しかし6月のSCO首脳会議では、声明に見られるように、この実現は将来に委ねられた。ロシアの新聞『コメルサント』紙の6月6日号は、この経緯を「ロシアは、SCO内でのロシアの立場を弱め、中国の立場を著しく強化する一連の提案を阻止し、外交的勝利を挙げた。しかし、今後ロシアは、この戦術的勝利にもかかわらず、中央アジアにおいて影響力を拡大し続ける中国と闘うのがますます難しくなるだろう」と解説している。中国はCIS内での金融支配の手段(開発銀行、SCO基金など)を得られなくても、2国間ベースで借款を与えることができる。銀行や基金の創設は先送りになったが、中国は100億ドルをSCO参加国向けの借款に拠出し、力を誇示した。(つづく)
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