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2012-06-22 00:00
(連載)NATOシカゴ首脳会議と米欧同盟の今後(1)
河村 洋
外交評論家
NATOシカゴ首脳会議では、緊縮財政の中で新しい挑戦が突きつけられる国際安全保障の重要な課題が話し合われた。西側民主主義同盟の中軸でとしてオーストラリア、ニュージーランド、日本、韓国といったヨーロッパ大西洋圏外の国々との提携関係を深化させようとする一方で、今回の首脳会議ではNATO自身の内部の足並みの乱れが見られた。先の首脳会議で取り上げられた主な論点と、それらが持つグローバルな意味合いを論じてみたい。
シカゴ首脳会議を前にNATOソースのジョージ・ベニテス編集長とヨーロッパ改革センターのトマス・バラセク外交国防部長は「アメリカもヨーロッパもアジア回帰戦略とユーロ圏金融危機によって欧州大西洋地域での防衛能力を低下させている」という懸念を述べている。英国王立国際問題研究所のアンドリュー・ドーマン準研究員は、シカゴ首脳会議を前に、会議での重要な議題を以下のように述べている。「現在、最重要課題は2014年にISAFが撤退するアフガニスタンであり、さらにイランとシリアも見逃せない。中東の動乱が目を引く一方で、ロシアとの関係が大西洋同盟に複雑な影を投げかけている。欧米にとってはミサイル防衛とNATOのさらなる拡大にとどまらず、リビア、シリア、イランにおいてもロシアとの関係は見過ごせない」という。他方で「加盟国のロシア観はそれぞれに異なる。東方前線諸国は弾道ミサイル防衛システムによるアメリカの強力なプレゼンスを求める一方で、イギリスは中央アジア経由でアフガニスタンからの兵員撤退にロシアを輸送路に使いたいと考えている」とも述べている。そして「NATOは厳しい予算制約の中で数多くの課題に対処しなければならないので、バードン・シェアリングと役割分担を考慮してゆかねばならない」という最も基本的な課題を挙げている。
首脳会議で最も注目される議題はアフガニスタンである。これはNATO初のヨーロッパ大西洋圏外での共同軍事作戦であり、しかも2014年のISAF撤退をもって任務は終了する。しかしアフガニスタンは2014年以降も欧米の支援を必要としている。多国籍軍の中核となったアメリカとイギリスは2014年後もアフガニスタンへの関与を継続するために安全保障の合意に至っているが、フランスのオランド新政権はより早期の撤退を決定している。2014年以降のアフガニスタンの治安動向については、ジョン・マケイン上院議員が4月にカーネギー国際平和財団で講演を行なった。まずマケイン氏は聴講者に「アフガニスタンでの戦争目的は、ソ連撤退後の当地の混乱を見てみぬ振りをしたアメリカの無責任な誤りを正すことにある」と述べ、9・11テロの脅威への意識を呼び覚ました。マケイン氏は現地情勢理解の基本的な前提として、「この4年間で南部でのタリバン勢力の著しい弱体化とアフガニスタン治安部隊の劇的な強化といった重要な進展がみられた」と強調した。しかし、マケイン氏は、現在もなおテロ活動を続けるタリバンとの性急な妥協には反対している。同上院議員は「依然として治安が不安定な時期の米軍撤退はタリバンのテロ活動を勢いづけ、対テロ作戦での成果を無に帰してしまいかねない」と警告する。
マケイン上院議員の警告に呼応するかのように、イギリスは対テロ作戦のために200人の特殊部隊を2014年以降も駐留させることを検討している。デービッド・キャメロン首相はこの件について最終的な決断をまだ下していない。パキスタンの『デイリー・タイムズ』紙さえも「そうした敗北主義によってNATOが過去11年間に築き上げた成果を台無しにしかねない」と述べている。アフガニスタンの他にもNATOは緊縮財政の中で数多くの課題への対処が迫られている。NATOは「スマート・ディフェンス」という新たな概念を適用し、同盟国同士で装備と施設を共用して各国が自国の強みに特化して同盟全体の防衛を補完し合うことによって、世界規模の安全保障の要求を満たして、サイバー戦争も含めた防衛能力を向上させねばならない。「スマート・ディフェンス」は同盟国の役割分担を超えたものである。シカゴ首脳会議では、「費用対効果の高い防衛力の実現を目指すために、核兵器はNATOの抑止力の中核だ」とする「抑止力と防衛姿勢見直し」の方針を採択した。これは核なき世界を謳った2010年のリスボン首脳会議からの方針転換である。シカゴで採択された「見直し」では、ミサイル防衛がロシアのミサイルに対する「スマート・ディフェンス」の一環だと述べている。(つづく)
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