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2012-06-18 00:00
「脱原発依存」を理由にした温室ガス効果ガス削減目標見直しは通用しない
高峰 康修
日本国際フォーラム客員主任研究員
経産省と環境省は、2030年における原子力発電の比率と2020年における温室効果ガス削減比率についてのシナリオの試算を相次いで発表している。これらをもとに、政府のエネルギー・環境会議で我が国の電源構成と温室効果ガス削減について決めることになるが、シナリオは、「2030年の原発比率15%、再生可能エネルギー3割強」の結論が先にある、いささか恣意的なもののように思われる。2020年時点において温室効果ガスを1990年比で25%削減するとしている、現行の我が国の国際公約は、2030年の原発比率を5割強、再生可能エネルギーの比率を約2割とする、という2010年策定の「エネルギー基本計画」に基づいている。原発と再生可能エネルギーは共に温室効果ガスに対してクリーンなエネルギー(ゼロ・エミッション電源)である。現行の想定では、2030年におけるゼロ・エミッション電源の比率は70%超を目指すことになっているが、最近出てきているシナリオでは、せいぜい5割強である。
これでは、2020年における温室効果ガス削減比率が大きく後退するのは当然である。環境省の試算を見ると、2030年の原発と再生可能エネルギーの比率をそれぞれ、15%と35%にした場合には2020年の温室効果ガス削減比率は15%となり、25%と31%にした場合は同13%になるとしている。原発が持つゼロ・エミッション電源としての価値を再認識すべきである。政府の対応には、大きな疑問が二つある。まず、現行の計画では、2030年における再生可能エネルギーの比率は約2割ということになるが、最近のシナリオ試算では、約3割ということになっている。再生可能エネルギーの普及はもちろん望ましいことだが、一体どういう手法を用いて約1割の上乗せを図るのか、明確になっていない。
二点目として、2020年に90年比25%の削減という数値目標は、国連気候変動枠組み条約事務局に提出された国際公約である。そして、これは、他の主要排出国の真摯な削減努力を前提条件としていることにも留意すべきである。このことは、我が国が、90年比25%の削減の国際公約を「後ろ向き」に変更するには、他の主要排出国の真摯な削減努力がないことを根拠とすべきことを意味している。原発依存度を下げたいから削減目標を後退させる、などという理屈は、到底通用するものではない。ゼロ・エミッション電源である原発を削減するのは、他の主要排出国ではなくて、ほかならぬ我が国自身の真摯な削減努力がないということである。これでは、他の主要国の真摯な努力がない、と申し立てることはできず、温室効果ガス削減交渉における我が国の交渉ポジションは大きく損なわれることになる。
ポスト京都議定書の枠組み作りは、2015年にも開始される。90年比25%の削減の目標は、我が国の経済に厳しい足枷となることが予想され、支持できないものであるが、見直すに当たっては、説得力のある、あるいは、せめて出来る限り受けるダメージの小さくなるような論拠を用意しなければならない。その前提として、ゼロ・エミッション電源である原発の重要性を再認識すべきである。今回は2030年の原発比が15%と決められることは不可避の情勢のように思われるが、これは近い将来に柔軟に見直されるべきである。現在の原発比26%を増やすことは、タブーのようになってしまっている。しかし、温室効果ガス削減を考えれば、むしろ原発の比率を高めることがあってしかるべきである。その際には、安全性が高いとされる小型原子炉を積極的に導入することも、大いに検討に値しよう。
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