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2006-08-20 00:00
レバノン社会の安定実現を最優先せよ
鏡見伸一
塾講師
今回のレバノン戦争の解決策として、国際部隊によるヒズボラとイスラエルの兵力引き離しが重要だという意見が聞かれますが、私は、そのような試みは短期的には有効でも、長期的な和平には結びつかないと考えます。なぜなら、ヒズボラが隆盛である理由は、レバノン国内で公平な政治的・経済的分配を受け取れないシーア派人口がターイファ制度(宗派制度)に不満を抱き、そのため宗派間対立によって国家統合が実現しないことにあるからです。よって、長期的な和平を実現するためには、レバノンのターイファ制度を改革し、レバノン国家を安定した国家にする必要があります。そのためには、以下のことがなされるべきであると私は考えます。
まず、ヒズボラの支持基盤であるシーア派レバノン人の政治・経済面での不利を是正する必要があります。たとえば、レバノン国会の議席数の配分を人口比を反映した公正なものに改正する必要があるでしょう。
イスラエルも、レバノンにマロン派キリスト教徒が支配する親イスラエル国家を作るという夢を諦めなければなりません。イスラエルは、レバノンが安定した国家になることが、自らの長期的な利益にもなるということを理解する必要があります。
そして、国際社会は、ヒズボラとイスラエルの停戦を監視するだけでなく、このようなレバノン社会の改革を積極的に支持しなければなりません。国際派遣部隊は、国境地帯だけでなく、レバノン全域に配置され、マロン派キリスト教徒のよる民兵組織の再結成を妨げ、ヒズボラやアマルによるマロン派キリスト教徒への攻撃を防止する役割も担う必要があります。また、国際部隊の中立性と正当性を維持するためには、中東地域のアラブ諸国と非アラブのイスラム諸国の国際部隊への参加も不可欠です。そして、日本政府は、欧米諸国とイスラム諸国の間の仲介者としての役割を果たしていくことができるでしょう。
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