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2012-05-11 00:00
(連載)自民党による亡国政治の歴史(2)
酒井 信彦
日本ナショナリズム研究所長・元東京大学教授
ただし、私が石川氏の文章で最も注目するのは、以上の記述に続く次の部分である。「その後、福田内閣から大平正芳内閣に代わり、領土保全策に変化の兆しが見られた。昭和54年5月、森山欽司運輸相は尖閣諸島の実効支配を確立するため、最大の島、魚釣島に仮へリポートを建設する計画を明らかにした。仮へリポートは同月下旬に完成し、尖閣諸島の地質、動植物や周辺の海中生物などを調べる学術調査団31人がヘリコプターや巡視船で魚釣島に派遣された。しかし、これに中国が抗議し、政府内が動揺した。園田外相は衆議院外務委員会で『日本の国益を考えるなら、そのままの状態にしておいた方がいい』と、仮へリポート建設や学術調査に反対の意向を示し、閣内不一致が露呈した。大平内閣は調査を予定より早く切り上げさせた。その後、尖閣諸島に本格的なヘリポートや漁港、灯台などを建設する構想が一部で浮上したが、いずれも中国への配慮から先送りされた」。
すなわち、日中平和友好条約の翌年には、ヘリポートを建設して実効支配に取り組みながら、中国の抗議にだらしなく撤退したのである。これを主導したのが、日中平和友好条約の積極的推進者であった園田外相である。このような人物こそ、中国の手先、民族の裏切り者と言うべき存在である。その後、1992年に、中国は領海法を制定して、尖閣は自国領だと主張するようになる。しかし、自民党はその後も一貫して、尖閣諸島の実効支配から逃げ続けたのである。この間に中国は経済的に急成長をし、その成果を軍備の増強に投入して、今や世界第2位の経済大国・軍事大国に成りおおせた。
石川瑞穂記者は、この文章を「民主党も自民党も、尖閣諸島の領土保全策を怠ってきた過去を謙虚に反省すべきである」と結んでいる。しかし自民党と民主党では、責任の重さと言う点では、全く比べ物にならない。2009年に民主党が政権に就いてから、3年も経っていない。それまでの殆どの期間、村山内閣も含めて、政権を握っていたのは自民党である。1978年の日中平和友好条約から、政権交代まで30年以上もあるのだ。
尖閣問題は、自民党による無能外交の典型的な例であるが、それはもちろん外交に止まらない。今日の日本の顕著な没落は、自民党による長年にわたる無能政治・亡国政治の必然的な結果である。したがって、現在の日本に何よりも必要なのは、自民党による亡国政治の歴史を、徹底して検証することである。それができなければ、日本の再生など望むべくもない。(おわり)
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