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2012-04-23 00:00
日本はミャンマーの少数民族問題解決に積極的に関与せよ
高峰 康修
日本国際フォーラム 客員主任研究員
ミャンマーをめぐる情勢は、予想を上回る速さで、望ましい方向に向かっているようである。4月1日に行なわれた議会補選では、アウンサン・スーチー女史が立候補を認められ、同氏が率いる国民民主連盟(NLD)が勝利した。補選の結果がミャンマー議会の勢力図に与える影響は微々たるものだが、象徴的重要性を持つものであり、クリントン米国務長官は、補選後直ちに、投資の一部解禁などの対ミャンマー制裁緩和を表明した。4月13日には、キャメロン英首相がミャンマーを訪問し、23日にはEUも制裁の停止で合意することとなった。我が国も、21日に行なわれた野田首相とテインセイン大統領の首脳会談で、円借款の再開や3000億円余りに上る債権放棄で合意している。こうした動きは、テインセイン大統領によるミャンマーの民主化を支援し、ミャンマーの市場を開拓する意図がある。
米国のネオコン的思想の持ち主からは、テインセイン大統領のミャンマー民主化を懐疑的に見て、制裁解除は時期尚早であるとの議論もあるが、大きな流れには全くなっていない。自由、民主主義、人権尊重といった価値観は重要だが、約20年にもわたった対ミャンマー制裁は、いささか的外れであり、的外れな制裁解除反対論が勢いづいていないことは歓迎すべきである。そして、対ミャンマー制裁解除においては、対中牽制という、ミャンマーの地政学的重要性が大きく考慮されたことは言うまでもないが、それが余り前面に出てくることなく、ミャンマーの市場としての潜在的価値が前面に出ている。これは、ことをスムーズに運ぶことに貢献してくれよう。欧米、そして日本の経済界の幅広い後押しを得られるからである。
ところで、現在、スーチー女史以下NLD出身議員は、軍政下制定された憲法遵守を宣誓できないとして、登院を見合わせている。この点について懸念の声があるが、抜き差しならない対立に至る可能性は低いのではないかと、私は思っている。これは、支持者向けのパフォーマンスであり、いずれ折り合うことを前提とした動きであると考えるのが自然である。それよりも、少数民族問題の方が不安要因である。テインセイン大統領は、少数民族との和解を進めてきており、1月には、最大の少数民族であるカレン族の武装勢力と合意に至っている。しかし、今でもカチン族と政府軍は交戦状態にある。少数民族問題で最も懸念されることは、テインセイン大統領による民主化と西側への接近を快く思わない他の国が、少数民族に武器供与を行なうなどして、和解を妨害することである。こうした事態は何としても避けなければならない。
現在のところ、少数民族と政府側の和平協議は順調に見える。ミャンマーの12の少数民族武装勢力からなる「統一民族連邦評議会」(UNFC)の幹部は、5月には、政府と和平協議を開始し、その協議には、日・米・欧にもオブザーバーとしての参加を要請する考えがあることを表明している。我が国は、21日の首脳会談において、ミャンマーの少数民族支援を行なうことを表明している。これは、食糧援助や難民対策を念頭に置いている。もちろん、これは大変結構なことである。しかし、日本政府は、もっと以前に、少数民族とミャンマー政府の和解の仲介を果たす用意がある、と大々的に表明していてしかるべきであった。折よく、少数民族側から、協力要請があったのだから、これに全面的に応えるべきである。少数民族問題は、今後のミャンマーの行方を握る重要なカギであることを認識し、我が国は、問題解決に積極的に協力することにより、ミャンマー民主化の流れを確固たるものにすると同時に、発言権の確保に努めることを期待したい。
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