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2012-04-11 00:00
自衛隊を西太平洋の国際公共財として位置づけよ
高峰 康修
日本国際フォーラム 客員主任研究員
日米両政府は、グアムの北方、サイパン島のすぐ南に位置するテニアン島の米軍基地・設備を整備し、陸上自衛隊と米海兵隊による共同の水陸両用作戦の拠点とすることを検討している。そして、テニアンの整備費を日本側が一部負担する方向だと報じられている。この件をめぐっては、日米間で、テニアン整備費の日本側による一部負担を含めた在日米軍再編の日本側負担の増額を認めるか否かの攻防が行なわれている。2006年の日米合意では、在沖米海兵隊のグアム移転費用の日本側財政支出の上限を28億ドル(約2300億円)としていたが、今回の計画見直しに合わせて、米側は、それを約40億ドル(約3300億円)に増額するよう求めている。これに対して、日本側は、グアム移転の規模が縮小されるのだから増額できないと主張している。もちろん、米国の要求を全て唯々諾々と飲むべきであるとは全く思わないし、米国内の歳出削減圧力の強さを考慮に入れたとしても、あまりに理不尽な要求を突き付けてくれば、日本国内のポピュリスト的反米感情を煽る懸念がある。このことは、米国側に率直に伝えてよいと思う。しかし、最終的には、戦略的価値と財政負担のバランスをよく考えて判断すべき問題である。
在日米軍再編は、米国の都合で米軍が勝手に配置換えするなどというものではない。我が国の安全保障戦略に直結するものであり、我が国は主体的当事者たるべきである。あるいは、在日米軍再編は、日米同盟の重要な手入れであると言ってもよい。ここを踏まえないで、負担の上限をどうするか論じても、あまり意味がない。現在、陸自と海兵隊による共同の水陸両用作戦は、米カリフォルニア州の海兵隊基地などを用いている。これでは、西太平洋からあまりに遠隔であり、効率が悪い。したがって、米国が西太平洋における拠点化をすすめるグアムに近いテニアンに、日米共同訓練拠点を作るのは理にかなっている。1月には、在日米軍再編を担当したグレグソン前国防次官補が、グアムに自衛隊を継続的に駐留させ、海兵隊などとの合同訓練を実施するよう、講演で提案している。自衛隊がグアムに継続的に駐留し、テニアンで日米共同訓練がより頻繁に行なわれるようになれば、自衛隊の能力向上にも資する上に、日米両軍の統合が進むことにもなる。
米国は、西太平洋における米軍を分散配備する方針である。自衛隊がこれと方向性を共にすることは、日米同盟の価値を高め、抑止力の向上に繋がる。テニアンのみならず、米海兵隊がローテーション配備されることが決まっているオーストラリアや、同じく交渉中のフィリピンなどへの自衛隊のローテーション、あるいは、それに近い頻繁な訪問も検討に値する。もちろん、その場合、豪州やフィリピンとの交渉が大前提であり、陸自の編制定数を大幅に増加させる必要もある。財政的負担も小さくないであろう。また、普天間(およびその代替施設)こそ、日米共同訓練の拠点として相応しいかもしれない。これには、国内政治的ハードルが高いことは容易に予想される。しかし、これらのような方策をとって、自衛隊の西太平洋におけるプレゼンスを飛躍的に高めることは、自衛隊の「西太平洋における国際公共財」化であり、それは、自助努力とバーデン・シェアリング(負担の分担)に他ならない。
我が国は、西太平洋の平和と安定に関して、決して、フリーライダー(ただ乗り)であることは許されない。自助努力とバーデン・シェアリングを高めることは、米国からの圧力を弱めることにもなるであろう。最終的には、支出する費用は同じようなものになるかもしれないが、地域の平和と安定のために自主的に負担するのと、要求されて出すのでは、当然、米国に対する発言権の面でも、意味合いが違ってくる。テニアンでの日米共同訓練計画は、是非とも、自衛隊の「西太平洋における国際公共財」化につなげるべきである。ただし、集団的自衛権の行使を容認しなければ、画竜点睛を欠き、全て画餅に帰するといっても過言ではない。
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