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2012-04-11 00:00
馬脚を現した橋下の「原発再稼働反対」論
杉浦 正章
政治
さすがに温厚な官房長官・藤村修も4月10日、大阪市長・橋下徹の傍若無人ぶりが腹に据えかねたのか、「支離滅裂だ」と批判した。橋下も“船中八策”で政治姿勢を抽象化出来ているうちはよかったが、具体論に踏み込まざるを得なくなってくると、馬脚が現れてくる。消費増税法案反対、原発再稼働反対と、焦点の重要課題で立場を鮮明にし始めた。右翼と思っていたが、政治の傍流で息も絶え絶えの最左翼・社民党と全く同じ政策とは恐れ入る。要するに、「橋下政治」の原点は、選挙目当てのなりふり構わぬポピュリズムにすぎない。しかし、マスコミがはやし立てるうちは、これが通用するからどうしようもない。関西電力筆頭株主とはいえ、保有株9%しかない大阪市の脱原発8条件を、朝日新聞は11日付1面トップで報じただけでは足りないのか、2面にまで展開して礼賛した。明らかに恣意的な紙面作りだ。橋下の姿勢と朝日の原発再稼働反対キャンペーンがマッチすれば、こうなる。NHKも、原発再稼働の報道の度に反対論しか報道せず、大手マスコミがこれほどバランスを欠く報道をする例を知らない。それも不偏不党を標榜する新聞と、公共放送であるはずのNHKが、臆面もなく偏っては、国民のバランス感覚も崩れる。
橋下は、大阪府と共に「100キロ圏内の知事に原発稼働拒否権を与える」という、超ドラスティックな8条件を関電に突きつけた。全国に波及すれば、事実上日本から原発を一掃する「亡国」の条件だ。しかし、法的根拠はゼロに等しく、弁護士であるはずの橋下が実現可能と思っているとすれば、ノーテンキと言わざるを得まい。事実、橋下は8条件について「私が出しても、国民も、関電も、無視すればいいだけの話」と述べているのである。方針決定と発言が180度異なるわけであり、藤村が「橋下市長は、自分たちの条件が生かされる、生かされないは関係ない、とも言っており、支離滅裂なところもある。きちんと条件を検討しているなら、それをちゃんと聞いてくれ、と言う方が正論だ。聞いても聞かなくてもいいと言われると、一体何をしているのかと思う」と反論するのも無理はない。
橋下の支離滅裂さは、具体論に踏み込めば踏み込むほど顕著になってくる。夏の電力不足をどうするかについても、「ピーク時の電気料金を何倍かにすることでピークをカットすればよい」と宣うた。大阪市民はそれほど裕福か。「武士は食わねど高楊枝」とはほど遠い市民性をもっているはずではないか。だいいち、中小企業がばたばたと倒産する。大阪市民は、このような指導者をいつまで認め続けるのだろうか。いい加減に“橋下催眠術”から目を覚ませと言いたい。こうした橋下の政治姿勢を分析すれば、選挙における「維新の会の得票」だけを意識する卑しげな思惑が見えてくる。その証拠に、橋下は「なんで8条件を出すかと言えば、政治的な効力があるからだ。有権者の皆さんがしっかりと判断する。国民が選挙でどっちをとるかを判断してもらう」と発言した。語るに落ちたと言わざるを得ない。橋下にとっては、政策などはどうでもいいのだ。政策は選挙に勝つための手段にすぎず、そこには国を司る責任感などかけらもなく、政治屋のテレビ意識の浅薄な選挙戦術しか見えてこない。
消費税についても、同様だ。「僕は大反対」と言い切っている。国の年金福祉政策が崩壊の瀬戸際であることなどには思いが及ばない。しかも、橋下の導入しようとしている「掛け捨て年金」制度は荒唐無稽(むけい)だ。裕福な層には年金が支払われず、掛けた年金が無駄になる。もらえないのがわかっているのに、誰が払うのかということになる。このように具体論になるにつれて、現実離れした主張を繰り返すようになってきており、橋下ブームは必ず下降する。社民党と同じ論理では支持層が増えるわけがない。原発再稼働も首相・野田佳彦は近く大飯原発3、4号機の安全を宣言、電力の需給見通しなどを踏まえて再稼働の妥当性も判断したうえで、経済産業相・枝野幸男が地元を訪れて説得する方針だ。橋下にせよ、「見切り発車」批判を繰り返す滋賀県知事の嘉田由紀子にせよ、ポピュリズムの自治体首長と国政とは一線を画して、野田は毅然(きぜん)として再稼働の判断を下せばよい。自治体の長の理解は求めるにしても、同意などを期待してはならない。自治体トップは、責任をすべて政府に押しつけたいだけなのだ。法的根拠のない再稼働同意を条件とすることなどには、耳を貸す必要はない。重要なのは5月5日の全原発停止を控えて、1基を再稼働させるかゼロになるかは、日本再起か、亡国かの戦いなのだ。
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