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2012-04-06 00:00
(連載)消費増税より相続資産からの課税強化を(4)
鈴木 亘
学習院大学教授
第五に、最大の問題点は、社会保障「目的税」だと言うことである。道路公団の利権の温床となったガソリン税(正確には、揮発油税と地方道路税)の例からも分かる通り、目的税は業界に蔓延る利権や高コスト構造を温存してしまう。社会保障目的であれば、その後の消費税引上げも大義名分が付きやすい。今後、次々と消費税率が引き上げられれば、社会保障費の効率化が全く進まなくなる。そもそも、日本の社会保障制度の根幹は、年金にせよ、医療保険にせよ、介護保険にせよ、雇用保険にせよ、「社会保険方式」である。社会保険方式とは、要するに受益に伴った「保険料」で負担を賄う方式であるから、そこに税金を投入する必要性は極めて乏しい。
しかし、歴代の政権が人気取りのために「国庫負担」「公費負担」として安易な「税投入」を行い、保険料を引き上げないような政策を打ってきた。日本人は、国庫負担や公費負担と言われると、税とは感じずに、「お上が自分たちのために払ってくれる」と思う人が多い。あるいは税と分かっていても、「自分以外の誰かが払うもの」だと思うらしい。このため、もはや基礎年金、介護保険、高齢者医療の半分は、国庫負担や公費負担、つまり税金で賄われている。社会保険方式を取っている国々の中では、まったくあり得ない異常な税投入の規模である。
これは、どんな金持ちでも、社会保障費の半分が税で補助されると言う意味で、極めて不適切な再分配である。例えば、経団連の会長にも、医療費の半分、介護費の半分、基礎年金の半分が、国民の税金で補助されているのである。しかも、その税金を払っているのは、高齢者というよりも、現役層たちである。まさに「持たざる若者」から「持てる高齢者」への逆再分配である。
この状況は、既に述べたように、所得税を消費税にしてもほとんど解決しない。世代内の所得再分配にせよ、世代間の所得再分配にせよ、この歪んだ再分配、むしろ逆再分配と呼ぶべきものを温存するのが、消費税引上げ、その社会保障目的税化なのだ。まさに日本社会を蝕む「既得権を守る」ための税制なのである。(つづく)
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