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2012-03-19 00:00
(連載)中国人の対ヨーロッパ経済進出の現状(1)
酒井 信彦
日本ナショナリズム研究所長・元東京大学教授
最近の産経新聞と朝日新聞に、ヨーロッパに対する中国人の経済侵略の実態が報じられている。極めて重要な事実であるが、余りと言うより、殆ど注目されていないようなので、まとめて紹介しておきたい。産経は、1月28日のロンドンの木村正人記者による、「中国マネー欧州席巻」「英ビッグベン買収観測も」という記事、朝日は2月26日の北京の吉岡桂子記者による、「欧州インフラ中国の胃袋に」「英で水道、ギリシャで港、揺らぐ国債より魅力的?」という記事である。朝日にはもう一つ3月5日にも、伊東和貴記者・沢村亙記者による、「欧州に『中国化』の波」「工場進出・インフラ投資、続々」「安い原料・賃金 急成長」「安保面で警戒感も」という記事があるが、これは主として後で取り上げることにしよう。
まず木村記者と吉岡記者の記事は、相違する点もあるが、内容的にはかなり共通しており、ヨーロッパ諸国のインフラを、中国が買収している実態報告である。取り上げられている事例も同じで、イギリスとポルトガル、それにギリシャの場合である。イギリスでは1月に、中国投資有限責任公司(これは産経の表現、朝日は中国の国家ファンド「中国投資(CIC)」と表現)が、ロンドンとその近郊に上下水道のサービスを提供する英水道会社テムズ・ウォーターの株式の8.68パーセントを買収したことが報ぜられ、産経ではさらに「投資額は発表されなかったが、5億ポンド(約604億円)は下らないとみられている」と言及されている。
ポルトガルでは、昨年の末に、中国の国有企業である中国長江三峡集団が、政府から電力会社EDPの株式の21パーセントを、26億9千万ユーロで買ったことが報じられている。また今年の2月2日、ポルトガル政府は、国営送電会社RENの株式25パーセントを、中国の国有送電網会社「国家電網」に3億8700万ユーロ(約390億)円で売ると発表した。ギリシャでは、ピレウス港の35年間に及ぶ運営権を「中国遠洋運輸」が49億ユーロ(約4900億円)で獲得した。このピレウス港については、朝日の3月5日の記事のほうに、沢村記者による現地取材があり、「アテネ郊外のピレウス港は紀元前から欧州の玄関として栄え、近代以降は海運大国ギリシャの発展を支えた」とその歴史が紹介され、重要な港湾であることが分かる。また沢記者によると、運営権が売られたのは2009年で、その対象は同港最大のコンテナ埠頭であるとしている。
朝日の3月5日の記事で特に注目されるのは、伊東和貴記者による、イタリアの現地取材に基づく報告であり、中国人の工場進出に関するものである。イタリアのフィレンツェの近くにプラートという都市があり、そこに中国人がどっと押し寄せ、「人口19万人のうち中国人は不法移民を含め4万人以上とされ、人口比では欧州最大のチャイナタウン」となったのだという。そうなった理由は、「中世から続く織物の町に異変が起こったのは約20年前。浙江省温州から来た中国人が工員として衣服工場で働き始めた。10年ほど前から自分で工場を起こす者が出てきた。そして近年、一攫千金を夢みる同胞が温州などから殺到している」からである。「プラートにある中国人経営の衣服工場は約3千」だとのことであるから、たった10年で爆発的な急成長を遂げたわけである。(つづく)
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