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2012-02-28 00:00
野田訪沖に見る“アリバイ作り”の虚飾
杉浦 正章
政治評論家
「辺野古への移転が唯一有効」とする首相・野田佳彦と、それを「無理」とする沖縄県知事・仲井間弘多との会談は、平行線をたどった。根底には、出来ないものを粉飾しようとする民主党政権の虚飾の体質がある。少なくとも野田は、自らの政権で普天間移設が実現するとは思っていまい。そうだとすれば、国内向けにも対米関係においても“アリバイ作り”の不誠実さが浮かび上がらざるをえないのだ。普天間固定化の流れには依然として変化はない。仲井間は野田に対して「辺野古はものすごく時間がかかる」と述べた。一見、辺野古を完全否定していないように見えるが、会談の基調は普天間基地の県外移設を求める立場に変わりがないことで一貫しいる。「ものすごく時間がかかる」とはどのくらいかと言えば、恐らく4分の1世紀単位でのことであろう。そのような長期のスパンで米国が極東戦略を練ることはあり得ない。海兵隊移転と普天間移設との切り離しの大転換と、オーストラリア、グアム、フィリピンへの展開は、中国の海洋進出への喫緊の課題として出てきているのだ。
野田は、仲井間に対してテーブルに頭が届くかと思われるほど深々と頭を下げてみせたが、基本的には「遅ればせ」とはこのことを言う。流れを振り返れば野田の訪沖は、日米両国が普天間と海兵隊の切り離しで合意してから、やっとその必要に気づいたとしか言いようがない。もともと5月頃の訪沖を予定していたのだ。訪沖に当たっての野田の基本姿勢は、陳謝とは裏腹に、言葉は悪いが、振興策という“札束”で頬をたたく印象が強いものとなった。野田が「沖縄振興予算は2937億円で636億円増」と言い、現地の要望の強い那覇飛行場滑走路増設に前向きの発言をしたのもその現れだ。仲井間は当然歓迎するが、それと普天間問題とは別だ。沖縄側はこれを見抜いている。名護市長・稲嶺進が“大盤振る舞い”について「日本政府の常套手段だ。もう通用しなくなったことが分かっていない」と冷淡な反応をしたことが象徴している。政府が提出した辺野古移転に関する環境評価書に対して、県は科学者の調査・検討結果に基づいて「自然環境の保全は不可能」との知事の意見書を提示した。
これを野田はどう覆すのか。科学調査を政治でひっくり返せるのか。非現実的なことをあたかも可能であるかのように説得してみせるのは、もうやめたほうがよい。野田訪沖の虚飾の側面は、対米関係においても著しい。野田は大型連休中の訪米で日米共同声明を発表する方針を明らかにした。この中でも普天間の辺野古への移転を堅持する方針だという。しかし、米国は既に普天間移設に見切りをつけたのであり、日米合意は普天間固定化を暗黙に認めたものに他ならない。それにもかかわらず共同声明で普天間の辺野古移転をうたっても、むなしさばかりが残るだろう。米国は日本政府が普天間移設の能力がないことを、元首相・鳩山由紀夫の「最低でも県外」発言以来のてんまつで、十分すぎるほど承知しているのだ。にもかかわらず、野田が訪米で普天間の辺野古移設に固執すれば、米政府は国内向けのジェスチャーと受け止める。だいいち、日米同盟にとって不誠実ではないか。
ひるがえって野田政権の展望を見れば、消費増税法案が成立してもしなくても、早期解散はさけられまい。政界再編も視野の内に入りつつある。野田政権は消費増税処理で力尽きる運命が見えるのだ。野田自身も消費増税という、一内閣一仕事を達成すれば、政権に未練はないのではないか。度々消費税解散に言及するのがその証拠だ。したがって野田のスケジュールには自らの政権在任中の普天間問題解決は存在していないし、実際に存在し得ないのではないか。野田は記者会見で「現状を自分なりに把握し、スタートラインに立つことができた」と述べたが、やっとスタートラインでは、在任中の問題解決はますます疑わしい。野田の言う「具体的になるべく早い段階で実績を作る」ことなどとても無理だ。ここは正直に普天間の辺野古への移設を断念して、新たな極東安保体制の構築を大統領・オバマと虚心坦懐に語り合うときではないか。
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