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2012-02-26 00:00
グローバル・フォーラムの「日米中対話」に出席して
池尾 愛子
早稲田大学教授
2月24日にグローバル・フォーラムの主催する「日米中対話:変容するアジア太平洋地域と日米中関係」という三角対話が都内で、日本国際フォーラム、カーネギー国際平和財団、中国社会科学院中国アジア太平洋学会の協賛を得て開催された。この対話は大きく2つのセッション分けられた。第1セッション「成長するアジアと日米中関係」の報告者は、小川英治(一橋大学)、ジェハ・パク(Jae-Ha PARK、アジア開発銀行研究所)、木村福成(慶應義塾大学)、鐘飛騰(ZHONG Feiteng、中国社会科学院 アジア太平洋研究所)、丸川知雄(東京大学)であった。『政冷経熱』の時期があったことを意識しながらか、政治・国際関係問題とは分けて、通貨・金融問題、経済関係を中心的テーマにおくセッションが設けられたようにみえる。とはいえ、2010年9月の尖閣諸島事件は、経済関係や経済問題に関する共同研究にも影を落としたことが伝わってきた。ただ金融問題に焦点をおこうとすると、5年後はおろか、この先1~2年の見通しを立てることも困難なようである。
第1セッションの自由討論では、通貨・金融問題に関連して規制を求める発言が相次いだが、こうした公開の場では金融問題の議論を避けたい人たちもいると聞く。現在の制度的状況は、過去の政策や制度間調整の積み重ねの結果(規制をめぐる試行錯誤を含む)を反映している。通貨・金融政策に関する研究はある程度の計量分析なしでは進まなくなっているが、そうした研究論文を読んでいても、行間から経済主体の行動が透けて見えてくることがある。規制する側も人間であれば、規制される側も人間であり、一つの規制が及ぼす効果を見通すことも容易ではない。ユーロという地域共通通貨が内包する問題を認識して憂慮した人たちもいれば、アメリカと米ドルに対する対抗意識が先行して問題をあまり見なかった人たちも大勢いたのである。いずれにせよ、より専門的な会議でデータや資料を共有して議論をし、そこでの共通認識が分かりやすい形で一般に伝えられる必要があるかもしれないと感じられた。
第2セッション「アジア太平洋地域の平和と安定と日米中関係」の報告者は、村田晃嗣(同志社大学)、ダグラス・パール(Douglas PAAL、カーネギー国際平和財団研究部門)、高原明生(東京大学)、ナラヤン・ガネサン(Narayannan GANESAN、広島平和研究所)、佐藤孝一(桜美林大学)であった。このセッションの報告者たちは、三角対話の問題意識「日米中3カ国のパワーバランスの推移によって、今後15~20年間のアジア太平洋地域はどのような影響を受けるのか、また、日本として望ましい地域秩序とは何か、それをいかにして形成するか、その過程でASEANや米国とどのように連携していくべきか、中国をいかに日本にとって望ましい方向に導くか」(『開催案内』)を共有して、分かりやすい議論を展開してくれた。自由討論も非常に活発に行われ、フロアにいた中国人たち(大使館員を含む)からの発言もあったので、三角対話らしくなったといえる。
2008年1月22日にグローバル・フォーラムが米国の戦略国際問題研究所(CSIS)との共催で開催した第2回「日米アジア対話:東アジア共同体と米国」と題する日・米・アジアの三角対話のことが思い出された。私は「第2回『日米アジア対話』に出席して考えたこと」(2008年1月30~31日)と題して、本掲示板に「アジア側パネリストと、アメリカ側パネリストが入るセッションが、プログラム上は分けられていた。それでも、対話自体が分けられたということではないと思うのだが、セッションIではアメリカ人の発言がなく、セッションIIでは中国人がほとんど中座した」という主旨の感想を記したことを想い出す。つまり4年前には、公開の場での三角対話は実現しなかったのである。今回の対話の冒頭で紹介されたように、中国社会科学院にアジア太平洋研究所が設置されており、そのおかげで、中国人研究者もこうした三角対話に参加しやすくなった、という事情があるのかもしれない。4年経って中国人研究者の姿勢にこれだけの変化が起こったのかという感想を持つとともに、今後も、変化を続けてほしいという期待も抱く次第である。
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