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2006-07-30 00:00
楽観視できない「新世紀の日米同盟」
平田瑞江
出版社勤務
7月13日付けの寺島貴則氏の投稿記事で、寺島氏は、「東アジア共同体構築のプロセスにおいて米国抜きの、域内国のみで安全保障問題を対処しようとするのは非常に危険であり、東アジア地域の平和と安定のためにはその基軸を日米同盟に置き、この地域で有効に機能させていくことが求められている」と主張しています。私も寺島氏と同意見ですが、東アジア地域で日米同盟を「有効に機能させていく」ためには、日本は米国との同盟関係を一層強固にする努力を続けると同時に、米国側の姿勢により冷静に注意を払い、より主体的に行動する必要があると考えます。その理由は二つあります。
第一に、東アジアにおける脅威、さらには東アジア外交戦略に対する日米間の温度差を認識する必要があります。7月5日に連続発射された北朝鮮のミサイル問題をめぐり、7月15日の国連安全保障理事会で日米等が提案した決議案は、中露の反対により制裁色は薄められたものの、結果として全会一致で採択されました。これは日米の結束があってこそ得られた成果です。しかしつぶさに見れば、この間の米国の対応には、例えば、中国が武大偉外務次官の平壌への派遣を決めると同時に、日本に対し制裁決議案の先送りを働きかけるなど、北朝鮮の脅威に関する認識に日米間で微妙なズレが散見されました。私はこの10日間「米国は日本が困ったときに本当に助けてくれるのだろうか」とハラハラしながら過ごしました。
第二に、6月29日に発表された小泉総理とブッシュ大統領の共同文書「新世紀の日米同盟」に過度に期待することはやや危険であると思います。同文書には、東アジア地域に関して「強固な日米協力が、中国の活力を生かし、北東アジアの平和と安寧の維持に資する」との文言がみられます。この共同文書によって、日米関係は対等なパートナーとしての関係が強化された、と当初私は評価していました。しかし、宣言が出された直後の北朝鮮関連の動きを見るに、米国はどこまで日本と行動をともにする気持ちであったのか、米国にとっては北朝鮮問題はお付き合いの対象でしかなく、真の関心事はイラン、イラク、パレスチナなどの中東問題にあったのではないか、と疑問を抱くようになりました。
「新世紀の日米同盟」を契機に、日本はむしろ東アジア諸国のリーダー的役割を果たしていくための方途を独自に探求すべきではないでしょうか。日本は、東アジアと米国の架け橋となりながらも、例えば、「人間の安全保障」という米国とはやや異なる観点から東アジア諸国のリーダーシップを発揮していくことが期待されています。日米関係の強化を図りつつも、東アジア外交の中で孤立しないよう独自の立場を主張し、米国かアジアかの二者択一ではない両面の外交政策が求められます。期待の文言に満ちた「新世紀の日米同盟」が、日米同盟の形骸化を宣言する空文とならないように、米国との関係を強化しつつも、独自の立場を確立していく日本の主体的な外交を期待したいと思います。
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