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2012-02-02 00:00
民主政権による普天間移設は絶望的となった
杉浦 正章
政治評論家
すべての原因はルーピー首相・鳩山由紀夫の「最低でも県外」発言で、普天間移設のガラス細工を壊したことに端を発しているが、今度もその“祟り”といってもよい。いわばベテランで最後の切り札として登場した沖縄防衛局長の不祥事である。これにより、もう民主党政権下において普天間移設問題が解決することは不可能視されるに至った。小躍りして喜んでいるのは、軍拡膨張主義をとり続ける中国だけだ。朝日がトップで「防衛局長厳重注意へ」とやったのを見て、そんなに処分が軽くて済むのかと思ったが、急きょ「更迭論強まる」へとかじを切り始めた。マスコミも政府も甘いのだ。官房長官・藤村修は局長・真部朗の進退問題について、何と「『いいことだ』という評価も出るかもしれない。国家公務員が選挙にどう臨むか。公選法違反にならないように、というための活動はあってもいい」と驚くべき見当違いぶりを発揮している。
自民党と共産党の候補がいて、隊員を呼び集めて「投票を棄権するな」と言えば、自民党候補への投票を促すもの以外の何物でもない。投票を促すのは、選挙管理委員会の仕事だ。何で防衛局長が代行するのか。問題は昨日筆者が指摘したように、これが防衛省の組織ぐるみで行われている可能性が強いことだ。朝日もこれに気づいたのか、2月2日付社説で「こうした動きは沖縄県内だけなのか。全国の自衛隊駐屯地でも似たようなことがありはしないか」と問題の拡大を予想している。「第3者調査期間で徹底的な検証を」と主張している。こんご国政選挙、地方選挙を問わず、自衛隊“集票マシーン”の組織ぐるみの選挙介入が暴かれ、クローズアップする可能性が強い。問題は、ことが自民党政権時代に定着させた自衛隊の“活用”の構図であることだ。今度も自民党候補への投票を企図している。自民党は、深く追及すればタコが足を食らう構図となる。まさに因果はめぐる火の車だ。深刻なのは、局長の更迭で済む問題ではないということだ。防衛相・田中直紀への問責決議可決への“補強材”となることは間違いない。とりもなおさず、首相の任命責任も連動して問われる。
次々にこれでもかと言った具合に普天間移設問題をめぐって生ずる波乱要素が何を意味するかだが、普天間移設への日米合意など、全くめどが立たなくなったといえる。政府は2012年度予算で沖縄振興費を沖縄の要求通りに満額回答で積み増しし、手順を踏んだ上で、6月には辺野古沿岸の埋め立てを仲井真知事に申請するシナリオを描いていた。こうした青写真は普天間移設問題のキーマンである防衛局長が「犯す前に犯すと言うか」発言をして更迭されたかと思えば、今度は選挙介入で大頓挫だ。統率する大臣は“素人”に続いて“愚鈍大王”が就任、連日の予算委で面接試験が行われている。まるでパロディーではないか。首相・野田佳彦は5月訪沖を検討しているというが、野田は消費増税という大事業を抱えて、正直沖縄どころではないというところだろう。消費税政局のテンポも、普天間移設問題にかかわっている“隙間”がないとみるべきだろう。いつ解散に追い込まれてもおかしくない上に、5月から6月の会期末にかけては、政局が燃えさかる最中である。そこに大混乱を伴う辺野古埋め立てなどを挿入できる余地などゼロといってよい。
こうした体たらくをみて、米議会でも移転先を辺野古にすることの困難さを認識して、別の方策を検討・主張し始めている。米政府も海兵隊の再配置を含めて現実的な対応をとらざるを得なくなるものとみられる。中期的には「普天間固定」が現実のものとなりつつある。触手を伸ばす中国は、日本の混乱とこれがもたらす日米関係の齟齬(そご)を欣喜雀躍(きんきじゃくやく)して見守っている。それでも防衛省は、日米合意に固執して、普天間移転に執着し続けているのが実態だ。そのはかない環境作りの一つが防衛局長の選挙介入であったのだが、ばれてしまっては元も子もない。要するに、消費増税一辺倒の野田政権は、普天間問題を解決する余力がなく、政局の現実もそれを許さない。消費増税が実現すれば、解散は必至であり、民主党政権が続くことはおぼつかない。従って民主党政権下における普天間問題解決は絶望的な様相を示していることになる。
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