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2012-01-26 00:00
(連載)「愚直」転じて「正攻法」に出た野田政権(1)
尾形 宣夫
ジャーナリスト
政権の正念場となる通常国会が開会、各党の代表質問も始まった。野田政権の迷走は誰の目にもはっきりしているだけに、少しも油断できない国会となりそうだ。本年度の第4次補正予算案、新年度予算案審議は、まるで雲をつかむような感じで展開するだろう。野田政権は、意地でも「社会保障と税の一体改革」を成案としようとするだろうし、逆に野党はふらつく政権の足元を徹底的に突いてくる。文字どおりがぶり四つの戦いになることは間違いないが、政権も野党側も全面戦争となるほど態勢ができていない。口角泡を飛ばす論戦はある。しかし、民主、自民とも掛け声の元気さとは裏腹な内部事情を抱えている弱みは何ともし難い。
1月24日の野田首相の施政方針演説は気負いが先行し、国民が求めている肝心の具体策を示さない「精神論」に終始した。施政方針としては、旧政権時代の福田、麻生両元首相の施政方針演説の一部を取り出して、野党の攻勢に待ったをかけようという異例な策に出たが、「政局より大局を目指そう」と呼び掛けた首相の胸の内も、騎馬上から己の存在を叫ぶ戦場の武将の大音声を思い起こさせるだけだ。何故いま政局なのか…野田政権にその責任のかなりの部分があることを脇に置いて、「大局」への対応を求めることには無理がある。だが、首相の正攻法は逆に野党を刺激してしまい、国会はそれこそ熟議など期待できないスタートをきってしまった。気負った出だしは、途中でブレーキを踏もうものならハンドル操作も容易ではない。場合によっては運転不能な不測の場面だってあるかもしれない。
首相は施政方針の「三つの優先課題」として(1)大震災からの復旧・復興、(2)「原発事故からの福島の再生」、そして(3)「日本経済の再生」を挙げた。だが、残念ながらいずれの優先課題も、総論で終わっており、肝心の具体的にどうするかがない。さらにそれに続く「政治・行政改革」では、「ムダの温床」と言われて久しい独立行政法人改革と特別会計改革は「廃止」がごく限られ、「統合」する方針が示されただけで、両改革で具体的にどれだけ冗費がカットされるのか全く分からない。これでは、改革の考え方を提示しただけで、政権の真意・本音がまるで分からない。てぐすね引く野党の思う壷だ。
ところが「社会保障と税の一体改革」では、過剰なほどの危機感を煽って見せた。現役世代と高齢世代、つまり「支える世代」と「支えられる側」の関係は、かつて多くの現役が支えた「胴上げ型」から今や3人で1人を支える「騎馬戦型」となり、いずれ1人が1人を支える「肩車型」に確実に変化していく。首相はこの現状を放置することに警鐘を鳴らし、消費税増税の必要性を強調した。歴代政権の施政方針演説と今回が違うのは、野田首相が日本の現状を紹介しながら、国民の心情に訴える言葉を多用していることだ。例えば原発事故に苛まれる福島県を訪問した折を振り返って、「山々の麗しき稜線。生い茂る木々の間を流れる川と水の音。どの場所に行っても、どこか懐かしい郷愁を感じます。日本人の誰もが、故郷の原型として思い浮かべるような美しい場所です」と述べ、続けて「福島の再生なくして、日本の再生はありません。福島が蘇らなければ、元気な日本も取り戻せない」と強調している。(つづく)
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