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2012-01-22 00:00
(連載)米国における憲法改正要求の動き(2)
島 M. ゆうこ
エッセイスト
多数反対派では、基本的に「法人は市民ではない」ため「選挙に影響を与えるような可能性のある献金をすべきではない」とする意見や、「多額の政治資金を寄付できない一般の国民は、結果的に疎外される政治体制になる」というのが目立った意見です。法人がある特定の政治家に無制限の政治資金を提供できる状況は、「法人に選挙を支配され、他の候補者に脅威を与える」環境をつくることになり、「概して腐敗した民主主義につながる」が共通した意見です。米国が「歴史的に保持してきた民主主義の原理と実践に矛盾する」が大半の感想のようです。
1998年イリノイ州の上院議員時代に、同州での「ロビイストによる寄付金をほぼ禁止する」法案の通過を目指したこともあるオバマ大統領は、2年前の最高裁の判決にホワイト・ハウスから、「企業のロビイストが特定の候補者に無限の選挙資金を提供することで特別な利害関係が生じる」ことを懸念したコメントを行っています。共和党のジョン・マケイン氏は2002年に、政治寄付金を規制するマケイン・フェインゴールド選挙財政法案(McCain-Feingold campaign finance law)を制定し、2008年の大統領選の活動当時も、腐敗を防ぐため、「常識的な寄付金の制限」を支持し、「大衆参加の政治」をアピールしていました。1月17日のAP通信によると、大統領選の最有力候補であるミット・ラムニー氏は、この法を批判し、撤廃を掲げています。
ニューヨーク州立大学の考古学の教授である、リチャード・ロビンズ教授の名著『Global Problems and the Culture of Capitalism』によると、1861年から始まった南北戦争を転換期として、アメリカの裁判所は除々に法人に課せられた様々な制限を解除し始めます。法人は、戦争から得た莫大な利益および、戦争で結果的に生じた政治的混乱と腐敗を利用して、主に鉄道を建設するため、土地と資金を得ることを可能にする法律制定に介入するようになります。その後、法人は次第に国の法律制定を牛耳るようになり、デルウェア州やニュージャージ州などのロビー活動は、法人の経営者の責任や義務の制限を永続的なものにするため、あらゆる方法で法人の権利を得ることに成功したのです。1888年から1908年にかけて致命的な産業事故で、70万人の労働者が死亡した期間に、裁判所は労働者の職場での事故に対して法人の責任や義務を制限しました。更に、裁判所が法人を優遇した判決として、最低賃金制、労働時間の制限、最少年齢の制限などを禁止したことは、重大な展開でした。暗殺死直前の大統領エイブラハム・リンカーンは、富が少数派の手に集中し、腐敗した時代の到来を予期していたのです。
1886年、最高裁は、米国憲法修正第十四条により、自由奴隷の権利を保護した1868年の修正法案に加えて、米国憲法のもとに「民間法人は自然人である」と認定しました。言論の自由も含めて、権利章典に基き、人々に与えられている同じ権利と保護を法人にも保障したのです。従って、法人は、政治に影響を及ぼし、国民一般の思考も支配するため、法人の富を利用する権利を得たのです。歴史の途上には様々な紆余曲折はあったものの、このような経過をたどり、法人は自然人として法律制定に介入するためのロビー活動、メディアの利用、教育施設の建設、さらには慈善団体の設立も自由自在にできるほどの莫大な富と権力を獲得するようになりました。現在進行中の憲法改正要求の運動は、このような150年の歴史的ルーツを無視して語ることは無意味です。上記したウォッチドッグの努力には敬意を払うと同時に、その努力がわずか数年で実るような簡単な戦いではないことも認識する必要があるのです。(おわり)
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