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2012-01-17 00:00
(連載)金正日総書記死亡の報に接して思うこと(2)
六辻 彰二
横浜市立大学講師
軍にとっても、現在の体制の維持は大前提です。そのなかで、できるだけ発言力を大きくしようとし、さらに集団指導体制の下、金正恩や金敬姫らはある程度、軍の要望を呑まざるを得ない状況が生まれると考えられます。その意味では、一年、あるいは半年以内に、ミサイル実験が再び行われたり、あるいは昨年の延坪島砲撃事件のような出来事が発生することも、あながちないとは言えません。
「独裁者」と目される人間が、自分ひとりの意思で物事を決めていることは、実はほとんどありません。どの国、どの時代であれ、ほとんどの場合、「独裁者」の周りには権力と、そしてそれに起因する富を求めて、砂糖に群がる蟻のように、ひとが集まってきます。「独裁者」は彼らを従えながらも、その支持に基づいて自らの権力を保持している以上、彼らの要望に応えなければならなくなります。
ロシアのプーチンは、ソ連崩壊後の新興財閥による汚職に厳しい姿勢を示し、大統領就任後に軍や治安機関の力を用いて彼らを排除していきました。しかし、結局は独裁的な権力をもつプーチンの威光をかさにきた軍や治安機関による汚職が蔓延し、プーチンはそれを黙認せざるを得なくなりました。これは、「独裁者」が支持者に支えられながら、支持者に絡めとられていることを示す、一つの典型例です。北朝鮮に話を戻せば、金正日が金正恩に代わったからといって、権力の中枢に群がることで利益を求めるひとがいなくなる筈はありません。
しかし、やや矛盾するかもしれませんが、指導部の変化が、日本を含む関係国にとって一つのチャンスになる可能性もまた、否定できません。軍の影響力が大きくなればなるほど、金正恩らはそれを抑えようとするエネルギーに駆られる可能性が大きくなります。しかし、国内に軍に対抗できるほどの組織はありません。つまり、金正恩が軍の力を政権中枢から段階的に削り落としていこうとした場合、外部の力を借りざるを得なくなります。その段階まできたとき、はじめて北朝鮮の新執行部は外部と真剣に交渉しようとすることになると考えられます。
したがって、当面は軍の影響力が大きくなり、それを慰撫するために、外部に対して挑発的な行為が続くことになると思いますが、それを超えた先に、金正恩らが軍との関係に修正を加えようとするタイミングを見計らうことが、日本をはじめ、周辺国にとって重要な課題になるといえるでしょう。(おわり)
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