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2012-01-07 00:00
(連載)日米両国で注目される今年の課題(2)
島 M. ゆうこ
エッセイスト
米国にはOWS運動と同じような主張を掲げて戦っている非営利団体が多数存在します。その一つである『People For the American Way』 (PFAW)は現在、米国最高裁の判事クレアランス・トーマスについて、「20年間、妻の収入を故意に公表していなかった」との理由で、1978年に制定された政府倫理法令の違反に関する調査を求め、全国に請願書を集める運動を展開しています。トーマス氏の妻、バージニア・トーマスは弁護士で、ティーパーティ運動のリーダーでもあり、政治活動家として知られています。2000年代、ヘリテイジ・ファンデーションで勤務していた時代の収入も含めて、所得の報告を怠っていた事実が発覚しています。
一方、昨年11月、米国最高裁は「オバマケア」と呼ばれている医療改革修正案を大統領選挙の前に聴取する決定を行いました。この最高裁の決定は、「オバマケアは、連邦政府の権限が憲法で定める範囲内を超えている」とする反対意見に基づくものです。共和党議員によって200回以上も修正を加えられて可決したこの法に人気がない最大の理由は、毎月の医療保険の支払いを国が義務づけることであり、健康でお金のない若い世代には特に受け入れられていません。この政府の義務付けが憲法違反であるかどうかを最高裁が決定することになっているため、バージニア・トーマスは、この法に反対する組織に貢献していた事実もあって、夫であるクレアランス・トーマスは、このケースに利害関係の生じた裁判官として参加する資格を失う可能性があるかどうかも含めて、この最高裁の決定は今年注目される大きな課題のひとつだろうと思います。
OWS運動は昨年世界中にその波紋を広げ、9月17日の開始から約2ヶ月後にはズコッティ公園でニューヨーク市警により強制的な陣営の撤去と多数の活動家に対する暴力的逮捕がありました。しかし、その数日後には、組織者らが再度の参加を訴え、素早い反響があったため、警察もこれに対抗し、逮捕が続きました。現在では、警察の手には負えないほど活動家数は増え、各地から活動家を激励するためニューヨークを訪れる観光客の姿も見られます。食事を無料で提供するボランティア団体も存在し、支持者が確実に増えているようです。更に、コロンビア大学の人類学のコースではこの運動に参加する大学院生に科目の履修単位を提供しています。発案者の教授自身がOWSの強力な支持者であることも理由かもしれませんが、一部の米国の教育者が学生に政治への関心を促すため、あるいは、若者を取り巻く外部の世界で何が起きているか、体験を通して学ぶ機会を積極的に与えることは重要だと思います。
今年に入ってからのOWS活動家は、オバマ大統領が12月31日に署名した国家防衛権威法令(NDAA)に反対しています。NDAAの大部分は軍隊に資金を提供するための法ですが、オバマ氏が署名した部分は、国籍を問わず、テロリストまたはテロリストの容疑がある個人を裁判なしに拘留できる権限を大統領に与えるもので、ニューヨークでの活動家らは、これが米国憲法改正第4条に反し、また人権にも違反するとして抗議しています。このようにOWS運動のエネルギーは著しいものがあり、最近、米国メディアの関心も高まっています。OWS参加者の目的は、米国民が失っている自由、公平、および正義を取り戻すことであって、基本的には大企業との癒着で腐敗している司法及び行政の体制変革です。具体的には、経済的正義であり、一般の国民は崩壊した金融システムとそのビジネス慣行に搾取されているからです。その腐敗に対する憤怒の象徴がOWS運動です。中東で展開している「アラブの春」のように、米国の若者がその行動力と希望を放棄しない限り長期的には何らかの変革につながるはずです。以上、今年日米両国で最も注目される可能性の高い課題について簡略的に述べてみました。(おわり)
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