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2011-12-16 00:00
(連載)政権与党「統一ロシア」はなぜ敗北したのか?(2)
飯島 一孝
ジャーナリスト
第二の敗因として、プーチン流の政治に対する反発がここにきて強まっていることが挙げられる。プーチン流とは、形式的には民主主義を掲げ、法律も制度も民主主義を基盤にしているが、実態はソ連型の政治を踏襲している「見せかけの民主主義」である。共産党書記長にあたる最高権力者が後継者を指名し、直接選挙で大統領を決める形になっているが、プーチン氏が絶対多数を占める与党の党首なので、指名した時点で事実上大統領は決まってしまう。つまり、選挙は一党独裁のソ連時代と同様、形式的になっているのだ。
民主主義の根幹である言論の自由にしても、最大の影響力を持つ全国ネットのテレビ局の言論の自由を封じ込め、政権批判をする野党指導者はテレビに登場させない。とくに大統領選にでもなると、政権与党の候補者ばかりをテレビに登場させ、野党側の候補者は形ばかりの紹介しかしない。これでは、有権者が野党の意見を知るのは事実上不可能だ。また、野党が選挙に参加しようとしても、政党の登録に難くせを付け、新規登録を拒否するケースが多い。やっと登録を受け、選挙運動に参加できても、下院選挙で議席を得るには得票率が全体の7%を超えないといけない。このため、リベラル派の政党は今回も議席を獲得できなかった。少数派の切り捨てである。
第三の敗因は、貧富の格差が拡大していることへの不満が鬱積していることが挙げられよう。プーチン氏が大統領に就任した2000年ごろから原油の価格が高騰し、国家財政が豊かになり、年率7%前後の経済成長を達成できた。その反面、大都市と地方都市、さらには金持ちと貧者の格差が年々拡大している。この背景には、エネルギー資源に依存する経済の体質改善が進まないことが響いている。メドベージェフ大統領は、ハイテク経済への転換を推進しているが、プーチン氏の国家主義的経済がそれを阻んでいるのが実情だ。
政権側は今回の選挙で首都モスクワに治安部隊を配置し、投票日の集会を一切禁止する強硬措置をとった。だが、投開票日の翌日、野党側がモスクワで開いた抗議集会には5000人以上の市民が参加し、「新しい選挙を実施せよ」「プーチン抜きのロシアを」などと、シュプレヒコールをあげた。これほどの数の市民が街頭行動に参加するのは近年なかったことだ。今後、プーチン政権がソ連流の政治を改めないと、「アラブの春」のような民衆の反乱が起きないとも限らない。プーチン時代の、終わりの始まりかもしれない。(おわり)
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