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2006-07-23 00:00
ASEANが示す多様性の中の統合の手本
小沢卓
会社員
7月17日付けの田村久雄氏の「東アジア共同体の設立は無理」との主張の投稿を読みました。「ASEAN諸国間ですら宗教的、文化的、植民地時代の遺産の面で大きな差異、換言すれば大きな価値観の相違が存在するのに、これに日本、韓国、中国を加えた共同体が果たして実現するのかは、現地経験がある者の眼から見れば疑問なしとはしない」とし、「東アジアの価値観は多様であり、共同体の設立は無理」とする主張でした。私は下記の理由で、この主張に同意できません。
第一に、ASEANを含めた東アジアの地域統合は現在着実に進展しています。昨年末マレーシアで初の東アジア・サミット(EAS)が開催され、クアラルンプール宣言ではEASを「共同体形成に重要な役割を果たし得る」と位置付けています。外交青書ではEASの意義に注目し、2005年を「歴史的な年」とまで呼んでいます。共同体実現の可否を議論する段階はすでに過ぎ、いかなる共同体を目指していくかに目を向けるべき時期に来ているのです。
第二に、ASEANこそ多様性の中での統合を進めており、東アジア共同体構築の手本を提示しているのではないでしょうか。今年発足30周年を迎えるASEANは、経済、安全保障、社会・文化の三本柱での連携を図る「ASEAN共同体」の2020年の実現を目指し、着々と準備を進めています。昨年末の第11回ASEAN首脳会議では、ASEANに法人格を付与し、ASEAN共同体の基盤となる「ASEAN憲章」の創設に関する共同宣言が採択されました。「ASEAN憲章」には、人権、民主主義の促進、核兵器の拒否、武力行使・威嚇の拒否、国際法の原則順守、内政不干渉などが盛り込まれています。これは国家の主権には触れないコンセンサス・ベースの従来の会議外交からさらに一歩踏み出したものであり、ASEANにとって転機となるでしょう。法人としてのASEAN共同体の整備を進めるにあたり、法治国家として近代化を遂げてきた日本の果たす役割も極めて重要になると思われます。
東アジア諸国間の差異を悲観して、結論を急ぐよりも、多様性の中に潜む可能性や意識を見出し、醸成していこうとする肯定的な志にこそ東アジア共同体実現の鍵があるのではないでしょうか。ASEAN共同体の2020年という時限設定は「遠くない未来」として実に適切だと考えます。EUも、1958年の欧州経済共同体設立から1993年の市場統合までに35年、1999年の統一通貨導入までに40年以上をかけているのです。2020年に向けたASEANの努力は、EUモデルと異なる東アジア共同体の構想に示唆を与えるものとして、日本は見守りASEANと緊密な関係を強化していくべきでしょう。貴フォーラムが今年9月に開催される予定の「日・ASEAN対話:東アジア・サミット後の日・ASEAN戦略的パートナーシップの展望」は時宜に適っており、成果に期待しています。
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