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2011-12-05 00:00
(連載)イラン核開発の阻止へ先制攻撃の是非(2)
河村 洋
政治活動家 ニュー・グローバル・アメリカ代表
この他にも見逃せない重要な点は、ロシアと中国の政策的立場である。ワシントン近東研究所のマイケル・シン所長と長期的戦略グループのジャクリーン・ディール所長は、アメリカと中国の間の問題認識のギャップに言及している。それは「アメリカはイランを孤立させるために中国を主要なパートナーと位置づけているかも知れないが、中国はイランをアメリカに対抗するうえでの潜在的なパートナーと位置づけている」ということである。さらに両人は「イランは中国海軍にとって、中東では潜在的に望ましい軍事基地だ」という中国の張世平(Zhang Shiping)陸軍少将の発言を引用している。中国の海軍力が急速に拡大している現在、この発言は見逃せない。こうしたアメリカとの地政学的競合に加えて、カーネギー国際平和財団のマーク・ヒッブス上級研究員は、ロシアと中国が上海協力機構を通じて安全保障と経済でイランとの協調関係を必要としていると指摘する。ヒッブス氏は「ロシアは大型商談のために、通常兵器と原子炉のイランへの輸出増大を望んでいる。イラン国内での自国の権益を守るためにも、ロシアはウランの濃縮を低レベルにとどめるためのロード・マップを提案するかも知れない」と述べている。
問題は革命精神に立脚するイランの現体制の性質である。国家の威信にとらわれる現体制と渡り合うのは難しい。ワシントン近東研究所のマシュー・レビット上級研究員は、「制裁がイラン経済に打撃を与えているとはいえ、イランからの石油と天然ガスの輸出先には中国、日本、韓国、イタリア、ギリシア、スペインといった国々がずらりと並ぶ」と主張する。石油価格も体制を維持するに充分な高止まりである。カーネギー国際平和財団のカリム・サドジャプール研究員は、「これまでにイラン国民の経済福祉がイスラム共和国の最優先課題だったことはなかった」と述べている。よって、より強硬な手段を議論する必要がある。
軍事攻撃に関して、レオン・パネッタ国防長官は、「紛争に伴う予期せぬ事態をもたらし、世界経済に悪影響を及ぼす可能性がある」と主張する。むしろパネッタ氏は6ヶ国協議を通じた外交努力によりイランに圧力をかけるべきだと訴えている。確かにパネッタ氏が主張するように、軍事攻撃には何らかのリスクが伴う。制裁には他の種類の圧力の併用が必要で、外交交渉もその一つである。しかし、ロシアと中国は、欧米とイスラエルほどイランの核保有を差し迫った脅威と感じていない。だからこそイランの核施設への先制攻撃を議論する必要がある。外交政策イニシアチブのジェイミー・フライ所長は「外交努力と制裁によってイランの核計画を止められなかったので、軍事行動の必要性が高まった」と主張する。また「イランの核保有によって湾岸地域とアフガニスタンの不安定化とハマスやヒズボラに代表されるテロ集団への核拡散が懸念される」と強調する。明らかに、今や何らかの行動が求められている、と私も思う。先制攻撃に関しては、外交政策イニシアチブのウイリアム・クリストル所長が11月6日のFOXニュースで「アメリカには行動の必要があるように思われ、またこの脅威を止める役割をイスラエルに任せきりにしてはならない」と論評している。
国際社会は「核拡散を止めるために先制攻撃は必要か」というイラク戦争の重要な課題に答えを見出せなかった。それは政策形成者達が忘れた宿題である。これは左翼達が好んで吹聴する「情報の誤り」よりもはるかに重要である。1981年にイスラエルが行なったオシラク原子力発電所への空爆が、サダム・フセインの危険な計画を遅らせたことを忘れてはならない。先制攻撃が緊急で必要性を増した時、アメリカが「背後から主導する」ようではいけない。最後に日本の政治家やメディアの間では、イラン核危機への注目度が低いのは残念である。この問題は彼らが必死になって取り組んでいるTPPと同等に重要な政策課題である。どうやら政治家達もメディアも国民が「飯を食っていく」ことにしか関心がないのだろうか?そのような国ならパッシングされても致し方ない。(おわり)
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