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2011-12-04 00:00
(連載)イラン核開発の阻止へ先制攻撃の是非(1)
河村 洋
政治活動家 ニュー・グローバル・アメリカ代表
今回のイラン核開発危機では、イラク戦争で未解決だった問題が問われている。「米英連合軍は核保有の確固とした証拠もなしにイラク侵攻に踏み切った」として、当時のジョージ・W・ブッシュ米大統領が批判された。しかし、これよりはるかに重要な「核拡散阻止のために先制攻撃は必要か」という問題について議論した専門家は、殆ど皆無と言ってよい。実はブルッキングス研究所のロバート・ケーガン上級研究員が『SAPIO』(2003年6月25日号)のインタビューで「北朝鮮の核保有を阻止するために攻撃すべきだ」と主張したことがある。その後、北朝鮮は2006年10月に核実験を行ない、何らかの核爆発を起こすことに成功している。国際社会はピョンヤン独裁体制への核拡散を阻止できなかった。
今回のイラン危機について概観を述べたい。緊張が高まったのは、イランのマフムード・アフマディネジャド大統領が今年の9月初旬に高濃縮ウランを抽出するための遠心分離機の導入を表明してからである。核拡散の疑惑が高まる中で、アフマディネジャド発言と並行して、イラン初のブシェール原子力発電所で電力供給事業が開始された。さらに11月8日に国際原子力機関が「イランの核開発は核兵器の製造の手前まで来ている」と警告すると、アフマディネジャド大統領はIAEAの天野之弥事務局長を非難した。湾岸地域への脅威が増大している状況下で、オバマ政権はアラブ首長国連邦へのバンカー・バスター弾の供給を提案し、地域支配を目論むイランの野望を抑止しようとしている。イランへの圧力が高まっているものの、イスラエルの専門家達は国際社会による制裁の効果を疑問視している。テルアビブ大学国家安全保障研究所のエフライム・カム副所長は「イランは核兵器を欲している。少なくとも核兵器の製造能力を欲しているので、いかなる代価も気にかけていない」という理由から、IAEAの最新報告書が充分な圧力となるか、疑問視している。カム氏はイスラエルには「3ないし4のイランの核施設を単独で攻撃する能力があるが、アメリカが中東で別の戦争を始めることに消極的なことは、オバマ政権がイラクとアフガニスタンから撤退しようとしていることから明らかだ」とも認めている。
イランに対する制裁と先制攻撃の影響を議論する前に、IAEAの報告書について述べたい。この報告書によると、イランは高性能爆薬実験と核兵器開発のための備品と原材料の調達の準備を完了している。また、シャハブ3弾道ミサイルに搭載する弾頭の原型も設計している。よって、イランは核兵器の開発一歩手前まで来ている。そうした差し迫った危機に鑑みて、制裁と先制攻撃の有効性を議論しなければならない。現在、アメリカ、イギリス、カナダがイランとは金融と石油化学での企業活動を停止するという制裁に乗り出した。しかし専門家達は制裁の効果を疑っている。イギリスの元蔵相のノーマン・ラモント卿は「広範な制裁によってイラン企業が革命防衛隊の支配下にある国有エネルギー部門と基幹産業への依存を高めることになる」と警告する。さらにイギリスのジェレミー・グリーンストック元国連大使は「制裁とは言語による非難と軍事攻撃の中間手段としてしばしば用いられる政治的圧力だ」と述べている。それに加えてオバマ政権は、アメリカが使える最も強力な経済的圧力と広く信じられているイラン中央銀行への懲罰手段をとることには消極的である。ホワイトハウスはこれによって石油価格の高騰を招き、アメリカとヨーロッパの経済回復が遅れると懸念している。
経済的な側面に加えて、イランのシーア派神権体制の性質も考慮しなければならない。アメリカン・エンタープライズ研究所のマイケル・ルービン常任研究員は、イスラム共和国がイスラム世界全土への革命の輸出を追求してきたと指摘する。核開発計画は彼らにとっての革命の目的を達成するためのジハードなのである。イランにとって核兵器は国際舞台での力と威信の源である。ランド研究所のアリレザ・ナーデル政策アナリストは「体制の存続を至上命題とするシーア派神権体制にとって、核による威信は制裁の代価を払ってでも手に入れたいものだ」と論評している。さらに『グローバル・セキュリティ・ニューズワイア』は、11月21日に驚くべき事実を報道している。欧米との対決を渡り抜くために、イランは今年の11月初旬には秘密裡にICBM実験まで行なった、というのだ。(つづく)
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