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2011-12-02 00:00
(連載)「犯す」発言で普天間移設は絶望的になった(1)
尾形 宣夫
ジャーナリスト
更迭された田中聡・沖縄防衛局長の「犯す」発言は、野田政権の足元を揺るがすだけでなく、日米関係に深い傷をつけてしまった。“事件”発覚以来の政権の動揺ぶりは誰の目にも明らかだが、最大の問題は政権が田中暴言を「一義的に事務方の不祥事」(藤村官房長官)として、政治的な責任、つまり政権への波及を懸命に避けようとしていることである。米兵による性犯罪が後を絶たない沖縄県民にとって、「犯す」という言葉は許されない、聞きたくもない忌まわしい響きを持つ。それが、普天間移設問題を巡って、あろうことか防衛省の現地トップである沖縄防衛局長の口から飛び出したのである。 沖縄県の地元紙の琉球新報が11月29日付の朝刊1面トップで田中暴言を報じ、一川防衛相は田中局長を本省に呼びつけ、簡単な事情聴取をしただけで、即日更迭を発表した。間髪を入れない素早い処分と見えるが、内実はそうではない。
田中局長の更迭が避けられない状況が強まった同日夕になって、首相官邸をはじめ外務省、防衛省、内閣府など関係官庁は騒然となっていたが、野田首相は例によって記者団の取材を拒み、1日置いた30日になってようやく「ぶら下がり」取材に応じ、「沖縄県民に申し訳ない。心からおわびを申し上げたい」と言葉少なに謝罪の気持ちを語った。自ら一歩前に出ず、周りの状況を見て語る、いかにも“野田流”の政治スタイルである。前日に語っても何らおかしくない言葉を一晩待たせたのは、なぜか。防衛省や外務省内の空気を確かめると同時に、最も気遣ったのは米政府の反応だったようだ。
米国防総省は暴言に即座に反応、「(普天間飛行場移設の日米合意に基づく)現行計画の堅持」を日本政府に念押しした、とする談話を発表した。暴言問題への言及こそ避けたが、暴言で沖縄県民の民意が一段と頑なになり、野田政権が動揺することを見込んだ上での談話だったことは間違いない。米側の素早い反応が何を意味するか、説明するまでもないだろう。暴言が及ぼす深刻な影響を国防総省がいち早く読み取り、右往左往する野田政権を尻目に先手を打ったということである。にもかかわらず、藤村官房長官は問題を「事務方の不祥事」と片付けた。政治的案件であることが明白なのに、あえて田中局長の不規則発言と突き放したのは、「難問をこれ以上背負いたくない」という思惑が見え見えだ。それ以上に、官房長官に内閣のスポークスマンとしての政治感覚、問題意識が欠如していると言った方が正確だろう。
30日沖縄に飛んだ防衛省の中江事務次官は、深々と体を曲げて仲井真知事に陳謝した。だが知事は「もう、これだけにしましょうね」と、わずか5分ちょっとで席を離れた。沖縄県民にとって忌まわしい米兵の暴行事件を思い起こさせる「犯す」発言をして、県民を激昂させながら、陳謝は事務次官で済ませようとした政権の感覚に対する知事の激しい憤りと見るべきだ。 (つづく)
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