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2011-11-25 00:00
中国は、訪中する野田首相に東シナ海ガス田共同開発の誠意を示せ
伊藤 和歌子
日本国際フォーラム主任研究員
11月23日、玄葉外務大臣は就任後初めて訪中し、北京にて日中外相会談が行われた。同会談では、海に関する協力として、2011年5月の日中首脳会談で合意された「海上における危機管理メカニズム」の構築に向け、新たに協議機関を設置することで一致した。日中関係における重大な懸念の一つである海洋安全保障において、一定の前進が図られたことは大いに評価すべきである。しかし、東シナ海資源開発については、玄葉外相が「国際約束締結交渉の早期開催が重要である」と述べたにも関わらず、中国の楊潔チ外相は「2008年の合意を履行するとの立場にいささかの変化はなく、適切な時期に交渉を再開していくことについて、引き続き意思疎通していきたい」と述べるのみにとどまった。
日中関係の安定的な発展を揺るがせ、日中双方の国民感情を大いに刺激する問題の一つである、東シナ海ガス田の共同開発をめぐる問題について、具体的な進展がみられなかったことは大変残念である。中国が東シナ海での資源共同開発問題について、このように慎重かつ消極的な姿勢に転じたのは、いうまでもなく2010年9月に発生した尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件以来である。2008年6月18日に日中政府が「東シナ海における日中間の協力について」を発表し、境界画定問題を棚上げして共同資源開発に臨むことで合意がなされてから、事件発生前までは、日中首脳・外相会談において中国側も「国際約束締結交渉に向けて実務レベルで調整していく」ことについて肯定的・積極的な姿勢であったし、実際に2010年7月には日中両政府間で初の条約締結交渉が行われている。
しかし、事件2ヶ月後に開かれた日中外相会談で、楊外相が「中国は一貫して東シナ海を平和、協力、友好の海にしたいと考えている。ただ、交渉を再開していく上で、条件と雰囲気が必要だ」と述べて以来、中国政府は「2008年の合意を履行する立場に変わりはなく、早期再開を図りたい」と繰り返すのみである。たしかに、来秋に指導部交代を控えたこの微妙な時期に、大きな動きを避けたい中国としては、「日本との合意を履行する」旨を意思表示するだけがぎりぎりの妥協点なのかもしれない。しかし、合意が履行されないままに、日中の中間線付近のガス田である「樫」や「白樺」では、中国側の単独の開発・生産が続けられており、このような状況が続けば、いくら中国政府が「合意履行の意思はある」と言っても、実際に共同開発に着手する頃には、合意時とは異なる状況になってしまう可能性も否めないだろうし、その間日本国民の対中感情をさらに悪化させてしまうだろう。
そうなると、日中の相互不信はさらに進み、中国政府は重要な隣国日本との信頼醸成のチャンスを逃しかねない。さらにいえば、中国の外交政策決定が多元化しているといわれる中で、中国の国益を保護しようとする国有企業や軍の声が大きくなり、外交政策における中国政府のリーダーシップにもマイナスの影響を及ぼすだろう。これ以上事態を悪化させないためにも、12月の野田首相訪中時には、中国政府は東シナ海の日中共同開発に向けて、なんらかの具体的な行動に踏み切るべきである。少なくとも条約交渉再開へのスケジュールを示すべきである。
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