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2011-11-18 00:00
中選挙区制導入で、超党派議連は早期に結論を出せ
杉浦 正章
政治評論家
今になって小選挙区比例代表制度を導入した政治家が反省したり、謝ったりしている。元衆院議長・河野洋平が「小選挙区制に踏み切ったが、今日の状況を見ると、それが正しかったか忸怩(じくじ)たるものがある。政治劣化の一因も、そこにあるのではないか」と反省すれば、民主党最高顧問・渡部恒三が「小選挙区制導入に賛同したことは、国民に申し訳けない」と陳謝。旗振り役だった後藤田正晴も、草葉の陰で「失敗した」と言っているに違いない。当初から導入に反対の論調を貫いてきた筆者に言わせれば、「国の命運を左右する選挙制度で政治判断を間違うような政治家はいらない。どうしてくれる」ということになる。11月17日に中選挙区制復活を目指す超党派議員連盟が初会合を開いたが、よい傾向である。
最近の政治の劣化は選挙制度がもたらしていると思える事象が多い。まず劇場型扇動政治やマニフェスト政治がもたらすポピュリズムへの転落である。小泉純一郎の「ワンフレーズ・ポリティックス」や、空想性虚言症形の民主党マニフェストが、政党に“追い風”を呼び、大量にチルドレンを登場させ、国の政治を左右する。政治家の資質の劣化が制度によって生じているのである。そのチルドレンは、1人区制だから党が選ぶ。英国のように政党の選任が総じて重厚な政治家群像を生んでいる場合と異なり、単に女性であること、人気の出そうな容姿であること、国民的な人気があること、などに選考の基準が傾斜して、「どうして2位ではいけないの」といった愚問を発する議員が登場する。これでは外交・内政で官僚をリードし、説得出来る能力のある政治家は台頭できないし、育たない。さらに重要な点は、制度によって、日本丸の船体が激しく右傾左傾を繰り返すことだ。つまり先の総選挙のように民主党の得票率は、44.9%なのに3分の2に近い308議席を獲得できる制度は異常だ。
民意が反映されにくい制度なのだ。得票が過半数に達していないのに、鳩山由紀夫や、菅直人のように、国民の完全負託が実現したと曲解して、独断専行型政治を断行する。日本のように価値観が多様化している国情においては、イエスかノーか型の政治はなじまない。それを選挙制度が無理強いする形となっているのだ。さらに渡部が「党を選び、人を選ぶという有権者の権利の半分が、失われている」と述べているが、そのとおりだ。現行制度は党を選ぶだけで、人を選んでいない。その証拠が、小選挙区で落選した候補が比例代表で当選してくるという、本来選挙にはあってはならない事象を生じさせるのだ。かつては、中選挙区制度の弊害として、多数候補の擁立が政権党に派閥を生じさせ、その派閥が利権の構造をもたらし、汚職の根源となると指摘されたが、これは「浜の真砂は尽きるとも」が分かっていない論議であった。小沢一郎の「政治とカネ」、菅、野田佳彦と続く外国人献金、消費者相・山岡賢次のマルチ献金などの例を見れば、選挙制度が原因とはとても言えまい。
戦前も、小選挙区は数年で中選挙区に変わっている。昔から国情になじまないのだ。既に1996年の導入以来、これまで5回実施されたが、メリットより弊害が目立つ。中選挙区制復活論のきっかけとなった議員定数是正問題は、公明党などが抜本改革を求めて対立、行き詰まりを見せている。民主党幹事長・輿石東も17日「数をもって決めていくものではない。結論が出ないのに、法案を出せるわけがない」と述べ、関連法案の今国会提出を見送る可能性を示した。いずれにしても、区割りや周知期間が必要だから定数是正は次回総選挙には間に合うまい。一方で 自民党総裁の谷垣禎一も制度の抜本改革について「中選挙区制にもう一回光を当てる必要がある」と復活への期待を表明している。この際、定数是正よりも、現行選挙制度を中選挙区制に変える抜本改革にかじを切るべきだろう。一部に「第9次選挙制度審議会を発足させるべきだ」との意見があるが、第8次が現行欠陥制度を答申したのであり、学者の机上の空論はもう結構だ。まず超党派議連が政治家主導で早期に中選挙区制導入への道筋を付けるのが先決だ。
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