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2011-11-15 00:00
ミャンマー民主化の急速な展開に日本も対応せよ
高峰 康修
岡崎研究所特別研究員
これまで、米国は、ミャンマーの軍事政権による人権弾圧を理由として、ミャンマーへの厳しい経済制裁を課してきた。これは、ミャンマーの地政学的重要性とのバランスを著しく欠く対応であった。その結果、ミャンマーの対中依存を強化してしまったのだから、失策であったと言わざるを得ない。我が国も、ミャンマーとの歴史的な経緯に基づく、良好であった関係を活かすことなく、欧米による経済制裁に同調してきた。
しかし、最近の米ミャンマー関係は、改善に向けた動きが著しい。11月初めには米国務省のポズナー次官補(民主主義・人権・労働担当)がミャンマーを訪問し、テイン・セイン現政権による改革路線について「変革は始まっている」と評価し、さらに「改革の前進が確認できれば、米ミャンマー関係は大きく改善することになる」と明言するに至った。こういう発言が表に出てくるようになったということは、水面下での交渉はさらに進展していると見るのが自然である。テイン・セイン政権は、10月に既に200人以上の政治犯を釈放しているが、今月に入って、追加的釈放を実施する意向を示している。また、民主化運動指導者アウン・サン・スー・チー女史を事実上の指導者とする国民民主連盟(NLD)の合法化と選挙への参加も実現する見通しとなっている。こうした動きは、ポズナー次官補らのミャンマー訪問で話し合われた結果であろう。
また、テイン・セイン大統領の側近であるゾー・テイ大統領府官房長が、11月11日に、読売新聞の通信員に対して「ミャンマーの民主化改革の進展には、米国の全面支援と、2014年のASEAN議長国就任が不可欠である」と言っている。そして、テイン・セイン大統領が、軍政時代の合意に基づいて中国が建設中であった大型発電ダムの開発中止を決定したことにつき「外側の世界に何を求めているかを示すものだ」として、対中依存からの脱却、現政権への支持、外資の呼び込みを明確にした。ミャンマー側の動きも急速かつ確固たるものと見てよいであろう。今や、ミャンマーの民主化支援という大きな潮流が出来つつある。これを後戻りさせてはならない。ミャンマーには、中国の海洋進出にとってカギとなるという地政学的重要性があるのはもちろんのこと、政治の民主化と自由主義経済の発展が進めば、よい市場が出来ることにもなる。
当然、我が国は、ミャンマー支援の先頭に立つべきである。現在、日本は年間20~30億円のミャンマー支援を細々と続けているに過ぎない。10月には、来日したミャンマーの外相に対して「バルーチャン第二水力発電所の補修や、人材育成センターの建設に向けた調査を行う」と表明している。これは一つのささやかな進歩ではあるが、もっと大々的に支援を行ってしかるべきである。我が国の得意分野は、何といっても技術協力である。技術協力・人材育成を通じて、「良い統治」に資するというのが、我が国のODAの傑出した点である。ミャンマーの場合、テイン・セイン政権が民主化改革に前向きなのだから、強引なやり方で民主化を強制する必要はなく、そんなことは却って有害でしかない。そうしたミスを犯しそうなのは米国であり、必要があれば、我が国は、そうならないよう助言するべきであろう。我が国には、ミャンマーをめぐる情勢の急速な展開に適応した、迅速で大規模な支援活動が強く求められる。
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