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2011-11-09 00:00
(連載)野田政権は「ガイアツ」でTPP反対論を封ずるのか(2)
尾形 宣夫
ジャーナリスト
同時に注目したいのは、政局を慎重に見極めてきた首相が、消費税増税という”刺激的な話”を、国内を跳び越して国際会議の場で言った意味である。内政の慎重さとは真逆の〝積極的〟な発言が何を意図するのか十分見極めが必要だろう。首相はG20首脳会議の席で「健全な経済成長のためには財政再建は不可欠だ」と強調して、「2010年代半ばまでに段階的に消費税を10%まで引き上げる」と明言した。そのために来年3月までの今年度内に法案を提出、法案成立を待って「増税の実施前に国民に信を問う」と、会議後記者団に対し解散にも言及している。民主党政権にとって「消費税増税」は政治的には”禁句”と言っていい。昨年夏の参院選で当時の菅首相が唐突に「消費税10%」を言い出して選挙に惨敗、党内亀裂と自身の政権の足元を揺るがして政局の混迷の引き金となった。消費税騒動は、菅首相の発言がその後も迷走、結局あいまいなものになってしまったが、当時の財務相は野田現首相だ。「財政再建→消費税引き上げ」は財務省の年来の悲願だ。
野田氏はギリシャ危機に伴うEU経済の混乱を目の当たりにして、消費税増税に踏み切るタイミングが来たと判断したのかもしれない。ただでさえ財務省主導の野田政権と批判が多い。その首相が先月末の所信表明演説では「消費税増税」にはひと言も触れていない。口に出せば反発が出るのは明らかだから使わなかっただけのことで、頭になかったわけではない。ただ財政再建については「歳出削減の道」「増収の道」と併せて「歳入改革の道」という3つの道を9月の所信表明に続いて提起した。「歳入改革」は、財務官僚が増税を念頭にして使う、ごく常識的な言い換えである。首相はG20の演説でギリシャ危機とEUの混迷について、「もはや経済金融を超えた政治の問題」との認識を示した。それだけギリシャ危機を「対岸の火事」視しないで、わが国としても各国と危機感を共有して見せたわけだ。
しかし、この首相の危機感に付きまとうのは、国際公約をすることで世界各国から求められるであろう「先進国最悪の財政赤字を抱える日本経済の処方せん」を先取りにしたのではないかという疑念である。いわゆる、「ガイアツ」を先読みして、国内世論の沈静化に使おうという思惑がなかったか。日本の外交にいつも付きまとうのが「ガイアツ」だ。日米経済関係で見れば、米国の強硬な対日要求が国内産業界の反対を抑えた例は、古くは日米繊維交渉に始まり、鉄鋼、カラーテレビ、自動車などの通商分野で顕著だった。この経済問題には、必ずと言っていいほど「政治問題」が絡む。時の政権にとって、「ガイアツ」は国内の反対論を抑え、相手国との関係維持に極めて効果的だったことも事実である。もちろん「ガイアツ」がゼロという外交はあり得ない。大切なのは、それが、どの程度影響力を持つかという「程度の問題」である。
「ガイアツ」は普天間移設問題でも指摘できる。鳩山政権が主張した普天間飛行場の「最低でも県外移設」は日米関係を不安定にさせ、普天間問題を「漂流」させた。それが、意識的とも言える民主党政権の「日米関係は日本外交の機軸」とか「日米同盟の深化」を再三強調する形で言われていることにも表れている。首相は野田流の政治”哲学”は語るが、当面する難問となると、肝心の具体的な話を避け、「物言わぬ首相」と言われている。その首相が今週、明快に物を言わなければならなくなった。(おわり)
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