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2011-11-08 00:00
(連載)野田政権は「ガイアツ」でTPP反対論を封ずるのか(1)
尾形 宣夫
ジャーナリスト
首相就任から2カ月余りの野田政権にとって、今週の国会は政権運営の今後を占う重要な場面が次々と表れるだろう。首相が最優先の課題だと再三言っている大震災復旧・復興は、政権にとって「1丁目1番地」。そのための増税、さらには先日の仏・カンヌでのG20首脳会議で国際公約した消費税増税、そして環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉参加問題と難問が目白押しである。特に週前半が要注意だ。これらの問題は、いずれもこれまでのような「安全運転」は通用しないことはもちろんである。首相はG20首脳会議出席を境に懸案の対応で積極策に転じた感があるが、急に路線を変えたわけではない。内政は慎重に、外交は強引にーーーという硬軟両面作戦を使い分けだしたということだ。国際会議の場で態度を鮮明にすることで国内世論をリードしようという思惑がないとは言えない。端的に言って「ガイアツ」を使った政策遂行である。
まず、いの一番に問われるのはTPP問題だろう。今週末の12~13日にアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議がハワイで開かれる。首相はAPEC前に「政治決断する」と明言しているから、どういう形で交渉参加の決定を下すのかは、この2、3日中にはっきりする。周知のように、首相は「国益を最大限追求する」と語っているが、政権自体がTPP参加のプラス、マイナスを説明していない。政権が言っているのは「自由貿易なくしてわが国の経済は立ち行かない」とするだけで、現にTPPでどのような論議がなされているのか、各国の利害の調整がどう行われているのか、といった肝心の情報はほとんどない。
つまり、自由貿易という建前論・総論が先行し、各論がない。21分野に渡るといわれる問題の中身、例えば規制緩和による輸入食品の安全性や保険制度のあり方、公共事業への外国企業の参入などは、ほとんど論議された形跡がない。だから、政権与党内で賛成、反対がぶつかり、反対派は野党を交えての超党派グループをつくり攻勢を強めるといういびつな事態になっている。率直に言って、野田首相をはじめ政権はTPP交渉参加に「前のめり」になっていることは否めない。民主党の前原政調会長は先に「交渉に参加して日本の言い分が通らず国益を損ずるような場合は、途中で撤退も可能」と言った。が、前原氏の言い分は、交渉参加反対派や慎重派を意識したもので、「途中撤退」が難しいことは、米側の首席交渉官が言下に「真剣に交渉するつもりのない国は交渉に参加すべきでない」と牽制していることを見れば、明らかだ。仮に政権にその決意があったとしても、それを前面に出して各国と渡り合える「外交力」が期待できるかは、はなはだ疑問である。
それとTPP参加が持つ外交面での政治的意味も忘れてはならない。首相は9月の国連総会出席の折、日米首脳会談で「早い時期の結論」をオバマ大統領に約束したが、その後野田政権のTPP交渉参加のオクターブは上がる一方だ。その背景には「普天間問題でギクシャクした対米関係の修復」と、21世紀の成長センターと言われるアジア地域での「米国の対中国戦略」への協力という政治的意味も忘れてはならない。TPPは関税、規制緩和といった通商・貿易問題だけにとどまらない、きわめて政治的色彩の濃い「協定」だと言っていい。(つづく)
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