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2011-11-04 00:00
小話から読み取るメドベージェフ大統領不出馬の理由
飯島 一孝
ジャーナリスト
このほどロシアで、国内IT産業関係者が一堂に会する「インターネット週間フォーラム」が開かれた。その休憩時間中に、参加者の間で広まったアネクドート(小話)が話題になっている。プーチン首相がメドベージェフ大統領に、来春の大統領選への立候補を許さなかったのは、メドベージェフ氏がインターネットに時間をかけすぎているからだ、というのである。このアネクドートをモスコー・タイムズ紙で披露したのは、ビジネス専門誌編集長のアレクセイ・パンキン氏だ。同氏は「どのアネクドートにも真実が含まれていると言われる」と前置きし、「ロシア第一のブロガーといわれるメドベージェフ氏の名声も、彼の評判の役には立たなかったということだ」とコメントしている。
メドベージェフ氏は早くからパソコンや携帯電話を使いこなし、ツイッターにも精通している。しかも、大統領としてのツイッターと個人用を併用し、しばしばその内容がロシアのメディアを飾っている。だが、いくらツイッターで発信しても国民の間で話題になることは少ない。なぜなら、ネットで国民が検索しているのは健康やスポーツが半数で、政治への関心は20%たらず。旅行情報よりも関心度が低いというのが世論調査の結果で分かっているからだ。もちろん、ロシアでもインターネットが急激に普及し、12歳以上の国民約6千万人が少なくとも月に1度使用し、約4千万人が毎日ウェブサイトを使っている。だが、ネットの記事を読んで社会問題に積極的になる人の数は限られているのだという。最も人気のあるブロガーの1人はゴミ一掃キャンペーンを提唱しているが、動員できる人は全国で1万6千人程度だという。
一方、旧ソ連時代には1千万人もの人々が土曜日労働運動や地方の清掃運動に参加していた実績がある。主催は労働組合やコムソモール(青年団体)などの共産党組織で、彼らの努力で大人から子供までこうした運動に駆り立てていたのである。プーチン氏としてはこうした役割をメドベージェフ氏に期待していたのではないかとパンキン氏は推測している。しかし、プーチン氏はまだ、その役割をメドベージェフ氏が果たすことを諦めていないとみている。その証拠に、プーチン氏はメドベージェフ氏を12月の下院選挙の比例代表制名簿のトップに指名しているからだ。そうだとすれば、プーチン氏は少なくとも旧ソ連共産党の手法の復活を目指していることになる。彼が急造した「全ロシア国民戦線」も同じ発想だろう。
肝心のメドベージェフ氏は、今回の大統領選候補者選びでリベラル派という看板を背負っているプーチン氏の分身であることが国民にバレてしまった。そうなった以上、若者やインテリの票を大量に集めることはできないだろう。プーチン氏の狙いは肩透かしを食う可能性が高い。そうなってもプーチン氏は大学の後輩のメドベージェフ氏を抱えていけるだろうか。すべては、下院選挙でプーチン首相率いる与党が前回の選挙同様、3分の2以上の議席を獲得できるかどうかにかかっている。
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