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2006-07-10 00:00
日中両国はいま運命の岐路に立っている
丹羽 忠雄
会社員
2006年版の「外交青書」によれば、2005年における日本と中国の貿易総額は1995億9千万ドルで、日本と米国の1993億7千万ドルを凌駕した。いまや中国は日本にとって第一の貿易相手国である。また、2005年の中国に対する直接 投資は累計額が468億4千万ドルで、米国に対する480億2千万ドルとほとんど並んでいる。日系企業が中国国内で直接、間接に創出した雇用者数は現在までで920万人とされている。特に日本のアパレル製造業は100パーセント近く中国人労働力に依存している。また、日本国内で技能実習制度によって受け入れられた中国人の研修生、実習生は例年4万人を超え、最大多数の外国人労働者となっている。人的交流も活発で、2005年に中国を訪問した日本人は339万人、日本を訪問した中国人は78万人で合計417万人となる。この数字は、同じ年の米中間の人的往来の合計175万人を遙かに引き離している。両国間の所謂姉妹都市は314組である。
以上は代表的な経済、社会的な指標であり、日中両国が如何に経済的に緊密に結びついているかを示すものである。所謂「政冷経熱」の「経熱」の側面であるが、わが国ではマスコミ等がもっぱら「政冷」面だけに焦点を置いて報道する傾向があり、「経熱」の実情を伝えることが少ない。そのため、日中関係の全体像について「政冷」面がすべてであるかのような偏った議論が横行し、バランスの取れた形で日中関係の全体像を議論する機会が少ないのは残念である。
日中の経済的結びつきは上記の通り急速な勢いで発展しつつあるが、そこに不安を抱かせるのは、「靖国」や「歴史認識」によって代表される「政冷」問題の存在である。それは、順調な経済関係の進展を挫折させかねない面がある。2005年4月の反日デモは一時的にせよ、日系企業の活動を阻害し、同時に日本人観光客も減少した。もちろん「靖国」や「歴史認識」においては、日中ともに譲ることのできない立場というものがある。しかし、それを譲り合って解決するのが政治の知恵というものであろう。日中両国が政治的、さらには軍事的に対立し、争い合うコースと経済的、さらには社会的に共存し、共栄するコースと、どちらが両国民の真の利益であるかは自明であろう。日中両国はいま運命の岐路に立っている。両国の政治指導者は、いまこそ「靖国」や「歴史認識」の問題を克服し、両国が共存、共栄するコースに進むよう一層の努力を払うべきではないか。
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