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2011-10-20 00:00
(連載)TPPと普天間(2)
尾形 宣夫
ジャーナリスト
もう一つの普天間移設問題は、ここにきて一段と慌しさを増してきた。野田首相は外交初舞台となった国連総会出席にあわせてオバマ大統領と差しで会談したが、普天間問題の早期解決を求める大統領に具体的に応えることができなかった。普天間移設にはまず、移設候補地の名護市辺野古沿岸域の海面埋め立てが必要になるが、米政府は近く日本側に対し遅くとも来年6月までに埋め立て許可申請を沖縄県の仲井真知事に出すよう求める考えだという。
仮に米側が求めてきても、野田政権は動きようがない。政権発足以降、関係閣僚が頻繁に沖縄を訪問、今週も一川防衛相に続いて玄葉外相が沖縄入りしたが、有り体に言えば、訪問時に持っていく”手土産”はなく、結局、知事や名護市長と会ったがこれまでどおり普天間移設の「日米合意」と、県民の過重な「基地負担の軽減に努力」を繰り返しただけで終わった。かつて巧妙に使い分けた「経済振興」の大盤振る舞いは、国の懐事情を考えれば、もはやできない相談であることははっきりしている。
野田首相は日米首脳会談後、「早い機会の沖縄訪問」を言っているが、臨時国会の開会を考えれば、沖縄訪問の時間的余裕はあまりない。首相が訪問する以上は、単なる顔見せというわけにもいかない。野田首相がTPPに積極的に向き合おうとするのは、普天間問題で具体的な進展を米側に示せない弱みを、米政府が重視する東アジア戦略としてのTPPの位置づけに日本としても協調の意思を表すことでバランスを取ろうという狙いが込められていると見ることができる。つまり、野田政権としては「普天間も難しい」「TPPも時期尚早」と言うことはできないのである。
ところで、普天間問題の見通しはどうなのか。率直に言って、日米双方とも本音では問題解決が不可能に近いことを分かっている。沖縄県民のほとんどが移設に反対だし、政府不信を強める知事が翻意するとは考えにくい。海面埋め立ての許可権限を知事から取り上げる”強権”発動も考え方としてはあるが、その段階になれば、問題は普天間・辺野古から沖縄全域の米軍基地の存在が真正面から問われることになる。
思い起こすのは、1996年4月の普天間返還の日米合意発表を取り付けた橋本首相、そして2000年の沖縄サミット開催を政治決断した小渕首相(ともに故人)の基地問題解決にかけた思いと行動である。執念と言っていい。野田首相にそれが期待できるのであれば、問題解決といかなくとも前進は可能かもしれないが、発足間もない野田政権にはそうした政治判断の余裕はない。政権50日は「言うことだけで」済んだ。しかし、これからの政権運営は着実に具体的な成果を上げることである。首相にその覚悟と自信が問われる。(おわり)
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