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2006-07-09 00:00
鼎の軽重を問われる「海外経済協力会議」
松下 順
商社勤務
4月20日付けの藤村一男氏の投稿記事「ODAに外交的配慮」を読みました。氏は「日本の国連安保理常任理事国入りを目指した昨年の国連総会における多数派工作でのG4案の惨敗は記憶に新しい。日本支持をめぐるこれらの事実は、わが国が困った時にわが国を助けてくれる友好国がほとんど存在しないことを示している。援助のための援助ではなく、かかる外交的配慮に立ったODAの実施が望まれる」と主張しておられます。このことは、これまでも多くのひとによって主張されながら、いまだにそれが実行されていません。7月6日の北朝鮮のミサイル発射を非難して、日本が国連安全保障理事会に提出した制裁決議案に対する各国の支持状態をみても、そのことは改めて痛感されます。そこで、藤村氏の主張を敷衍する私見を下記に投稿します。
去る5月に、「タレ流し」と批判の強かったODAを戦略的、効率的に活用すべく、そのための司令塔として「海外経済協力会議」(総理、官房長官、外務大臣、財務大臣、経済産業大臣を常設のメンバーとする)が設置され、私も今後の展開に期待を寄せていました。しかし、6月に同会議が中国への円借款の凍結解除を決めた(6月23日には正式に日中間で調印された)報道に接し、以前と何ら変わっていないことに落胆しています。中国への円借款凍結解除は、靖国問題や東シナ海のガス田開発をめぐる日中間の対立により今年3月から凍結していた中国への2005年度分円借款を解除し、約740億円の供与を決めたものです。報道によれば、日本側はカタールでの約1年ぶりの日中外相会談により「前向きの雰囲気が出てきた」(外務省幹部)と判断し、日中関係改善のムードを高めたいという思惑から対中円借款の凍結解除に踏み切った由です。しかし、それにも関わらず借りる側の中国は、「日本側が日中関係を重視して凍結解除を決定したことは好意的に受け入れるが、我々としては『重視』だけではまだ足りないと考えている。日本側は関係改善と発展のために誠意ある態度を示し、さらに具体的な行動をとる必要がある」として、小泉首相の靖国神社参拝中止を暗に求めるなど、歓迎よりもむしろ不満を表明しているのです。
世論では、対中円借款の凍結解除の時期が「遅すぎた」とか「時期尚早」といった声が上がっていますが、私は時期の問題以前に、こうした日本のODA施策が、中国の顔色を伺う日和見的性格が強く、戦略的思考を踏まえた外交戦略の一貫性に欠けるように思えてなりません。それが全て裏目に出ているのが、上記の中国側のコメントに象徴される現状ではないでしょうか。日本は軍事力という外交カードを自ら禁じていることもあり、ODAはほとんど唯一の手持ちの外交資源です。これをただ単に慈善的、人道的配慮だけで行なうのであれば、日本は外交戦略をもち得ません。最近でも北朝鮮のミサイル発射問題に関して日本が国連安保理に提出した制裁決議案に対して、中国は強硬に反対し、拒否権行使も辞さない構えのようです。北朝鮮の挑発は日本の安全保障を脅かすものであり、中国が日本の要請に協力しないのであれば、円借款の供与を再凍結するくらいの姿勢が必要ではないでしょうか。「海外経済協力会議」はその鼎の軽重を問われていると思います。官僚まかせではなく、政治家主導の意思決定が求められていると思います。
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